この映画にも、戦争や政治を皮肉ったような描写はあるのですが、当時のイギリス政治への批判など、風刺としての『ガリバー旅行記』が知りたければ、ジョナサン・スウィフトの原作を読んだ方がいいでしょう。どこが風刺になっているのか解説が無ければ解らないかもしれませんが、普通に読んでいても十分に面白い作品だと思います。
ハリーハウゼンの人形アニメが見られるのは、結婚した二人が新婚旅行と称し、王宮から抜け出したときにリスに襲われるシーンと、最後のワニとの決闘シーンだけで、そういう意味では、見どころはあまり多くありません。
この映画で語られるべき事は、多種多様な合成技術を駆使した画面作りにあるのではないでしょうか。
当時の最先端のトラベリング・マット技術や、遠近撮影法などを利用して作られた画面はかなり完成度が高い。軍艦や王宮などのミニチュアのセットも驚くほど正確に作られているので、見ていて楽しくなってきます。
かなり多くのシーンが「小さい人間側からの目線」で描かれており、完成した画面構成のレイアウトは本当に素晴らしい。
『シンドバッド7回目の航海』の時は、画面の中を「小さなお姫様」が動き回っていたが、ガリバーでは、常に普通サイズの人間から見た「大巨人」が動き回っていると言ってもよいでしょう。
ハリーハウゼンといえば人形アニメのアーチストというイメージが強いのですが、もちろん彼は「特撮」担当のSFXマン。多くのトリック撮影を使用したこの作品でそれを思い出させてくれました。想像力を駆使して特撮を面白く見せる能力はさすがで、たとえ大金を使ってもこれほどの作品が作れるとは思えない。ファンタジーが好きな人にはお勧めの映画。
やはり、ハリーハウゼンは「特撮の神様」だったのです。