「特撮映画」という言葉が本当にぴったりとくるこの映画。物語の始めには、緻密に描かれた本格的な脱走劇があり、ロビンソン・クルーソー、ロマンス、そして巨大生物の登場。最後にはあのネモ船長まで出てきてしまうというおもちゃ箱のような映画です。これほど多くの楽しみが詰まった映画はなかなか無い、と評価するか、すべてが中途半端な映画と感じるかは人によってさまざまでしょう。なにしろ、日本語のタイトルにある『巨大生物』が出てこなくてもこの映画は成立してしまうのだから・・・『巨大生物』が出てこなければ、SF映画だったという事を忘れてしまうような作品です。

また、ネモ船長以外の登場人物全員が無事に島を脱出するなど、今では考えられない。同じ題材の映画がもし現在作られたら、生物の創造主であるネモ船長がまず食べられ、人間の方が捕獲され食べられてしまうというような一寸先は何が起こるかわからないホラー映画のような作品になるのではないでしょうか。

脚本の書き直しの時点では、島に先史時代の恐竜がいたという設定もあったのですが、結局その案は却下され、その代わりにネモ船長が登場する事になったとの事。
なるほど、あの巨大鳥はニワトリにしては妙な造形だと思っていたが、先史時代の生物という設定の名残りだったわけです。結果的にこの案は成功したように思います。他に類を見ない独特な雰囲気のモンスター映画になったのだから。

ハリーハウゼンのクリーチャーに期待する人にはちょっと物足りないかもしれませんが、この作品は忘れかけていた冒険心を思い出させてくれる、大人の鑑賞にも十分に堪えうる良質なSF・冒険・ファンタジー映画でした。

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