しかし、まだ勝負はついていない。黄金の銘板は、まだ一つしか泉に投げ込まれていなかったのだ。残りの二つをシンドバッドが奪ったところで、洞窟から再びケンタウロスが現れる。反対側の洞窟からはグリフィンが登場。今作品初のモンスター同士による対決場面で、最後に用意されたクライマックスシーン。

グリフィンとは、鷲の翼と上半身、百獣の王ライオンの下半身をもつ生物で、古代より多くの物語に登場し、『王家』の象徴としてももてはやされた伝説上の生物。正義の味方にははまり役のキャラクターという訳です。

このモンスター同士の対決は、クーラがグリフィンの足に剣を突き刺したことにより動けなくなったグリフィンをケンタウロスが絞め殺すことで決着します。
部下たちの助けをかりてケンタウロスに文字通り馬乗りになったシンドバッドが、首に剣を突き刺して退治する事に成功。ケンタウロスの断末魔の叫びは、オペラのテノールを意識してアニメートしたとの事(笑)

この混乱に乗じて黄金の銘板を奪い返したクーラがそれらを泉に投げ込んでしまう。体が透明になり、シンドバッドに剣を振るうクーラだったが、泉からわき上がる水に影が映ったところをシンドバッドに刺されて絶命する。

うーん、後半の展開は目まぐるしい。

クーラの血で真っ赤に染まった泉が元の色に戻り、シンドバッドが水面をのぞき込むと、そこには王冠をかぶり、王族の衣装をまとった自分自身の姿が映し出されていた。そして、水面から財宝の王冠がゆっくりと浮かび上がってくる。

その王冠がシンドバッドの物である事を示すシーンだ。だがシンドバッドがその王冠を国王に捧げ、黄金の仮面の上からかぶせると王様の呪いが解けて元の顔に戻ったではないか。シンドバッドにとっては、王国と権力は魅力的ではなかったのだ。



ラストシーン

船上でマリアンナと話をするシンドバッド。
「どうしてなの?王国も富もあなたの物だったのに。」とマリアンナ。
シンドバッドが答えて、
「国王に本当の自由はない。結婚も自由にできない。」
と言い、マリアンナとラブラブモード。

そして色々な場面で大活躍し、自信をつけたお調子者のハロウンが、
「船長、僕を本物の船乗りにして下さーい」と言いながら、高い所から足を滑らせて危機一髪。空中に宙ぶらりんで乗組員の笑いを誘ったところで映画は終了。

この役者さん、さかな君に似てる・・・

どーでもいい事ですが、今回印象に残ったのが登場人物たちの目。マリアンナの濃い顔にアイシャドーばっちりの目とシンドバッドの脂ぎった目。そして極めつけは魔術師クーラのギラギラした目。本当にどうでもいいか・・・

作品としては、かなり見どころが多くてお腹がいっぱい。前作もそうだったが、悪党がどこか憎めないキャラで不快さが無いのがいい。むしろ悪役に肩入れしたくなります。インドの神話やギリシャ神話を題材にしているのですが、宗教観など全く無視した作りは、ハリーハウゼンがファンタジー映画を作りたかっただけのように思えます。そのような伝統にとらわれずに映画を作ったことがいい結果を生んだのかもしれません。難しく考えずに肩の力を抜いて楽しんで下さい、というメッセージが聞こえてくるようです。

そういえば、マリアンナの手の目玉はどういう意味があったのでしょうか? それを見た原住民の反応の意味するところは何だったのか・・・。その秘密は最後まで明らかにされないが、ケンタウロスが住む洞窟の入り口にも描かれており、勝手な想像をすると、生け贄にされる運命の元に生まれてきた女、という意味だったのかも。

前作と比べて露出度600パーセントアップ!の作品で、子供から大人まで楽しめる作品。大人はお色気を楽しむ映画だと言っているのではありません、念のため・・・

前作から15年の歳月が経過しているのだが、それを全く感じさせない特撮の技術。
進歩が無いと言っているのではありませんから・・・念のため。

ストップモーションの技術が15年前にはすでに完成されており、逆に15年前の作品も、決して古くはないという事でしょう。そして、これからも古臭くなることは決してない・・・と勝手に都合のいい解釈をしてみる。

何度見ても飽きることのない『匠の技』を堪能しましょう。

戻る