逃げ延びたゼノビアは人間の姿に戻ったものの、やはり薬の量が足りなかったようで片方の足が鳥のまま残ってしまう。
「足りなかった、足りなかったのよぉー」と泣き叫ぶゼノビアには大笑いしてしまいました。

いよいよ船は北極圏に到着。氷の海を突き進む船はなかなかの迫力。これ以上船では進めなくなり、一行は徒歩で目的地を目指す。ここで今回初めての大型モンスター登場。

単なるでっかいセイウチだ・・・

そして、氷の洞窟を抜けるとそこには川のある暖かい緑地が広がっていた。
水遊びに興じる二人のヒロインの姿はなかなか色っぽい。ここに一角原始人が現れて、びっくりした二人が逃げるシーンがあるのですが、ディオーネが足を滑らせる場面は演技ではなく、本当に滑っているのがかなり笑えます。


この原始人が味方になり、神殿の入り口まで案内してくれるのだが、この神殿は何故かピラミッド型。
一方、別のルートから神殿に到着したゼノビアは、入り口が見つからず壁を爆破するという荒技で神殿に侵入。この時、神殿の入り口を塞ぐ岩を退けようとしたミナトンは、マヌケにも石を真後ろに引っ張ったため足場が無くなり、その岩の重みに耐えきれずに落下。岩の下敷きになり、あえなく自滅。「役目は終わった」とゼノビアに見捨てられたミナトンの出番はこれで終了。拍子抜けとはまさにこの事・・・

神殿内部の巨大なセットはなかなか幻想的で美しい。
神殿に降り注ぐ光の中にカシム王子を入れようとしたところ、先に到着していたゼノビアが現れ、邪魔をしようとする。息子のラフィがシンドバッドに挑むが、ヒヒに襲われて階段から落ちて死亡。王位に就こうとする男のあまりにもあっけない最後。
悲見に暮れるゼノビアを後目に、カシム王子を神殿の力で元に戻すことに成功するが、気がつくとゼノビアの姿がない。皆が見ていない間に、神殿の守護者である剣歯虎に乗り移っていたのだ。

最後の見せ場であるモンスター同士の戦いは、ちょっと人間よりも大きいだけの原始人とサーベルタイガーの戦いでスケール感は今一つ。しかし、さすがにハリーハウゼンのストップモーションは見応えがあります。文句なしの出来映えですが、やはりというか、味方の原始人は戦いに敗れ、結局悪の親玉を倒すのは人間というお馴染みの結末・・・。人間の姿に戻ったカシム王子の戴冠式が無事に執り行われて、めでたしめでたし。

最初と最後にちょっとだけ人間の姿で登場したカシム王子は何だか冴えない風貌。王子の威厳まるで無し、とは言い過ぎかな?

さて、この作品はどう評価していいものやら。個人的な感想を言わせてもらうと、ハリーハウゼンの特撮は文句なしに素晴らしいし、映画としても結構楽しめるのですが、冷静に考えてみると、これは大人の鑑賞に耐えうる作品なのだろうか、という疑問が浮かぶ。どこか子供だましな印象を受けてしまうのですが・・・

この映画は興行的には失敗してしまい、同年の『スター・ウォーズ』とぶつかったせいだとも言われていますが、原因はそれだけではないような気がします。
作品にアラが多く、突っ込みどころが満載。ヒヒのストップモーションに時間をかけすぎて、他のモンスターの印象が薄いのか、キャラ自体に魅力がないのか分かりませんが、どこかちぐはぐな印象が残ります。

『黄金の航海』の時に「ハリーハウゼンのモンスター達から愛嬌が無くなり、単なる醜い怪物が多くなったように感じる」と書きましたが、この作品でそれにいっそう拍車がかかったように感じるのですが、これも気のせいなのでしょうか・・・
蜂やヒヒ、そしてセイウチと実在の動物の巨大化したものが目立ち、ガイコツ剣士もどきや一角原始人、剣歯虎も今一つ新鮮味に欠ける。全体的に昔の作品の焼き直しっぽい雰囲気がします。独創的な造形で、個人的にも最もお気に入りのミナトンが、ずーっと船のオールを漕いでいるだけという扱いだったのも、マイナス。

ちょっと評価が低くなってしまいましたが、それはこれまでのハリーハウゼンのシンドバッド作品と比較するから物足りないというだけの事であり、先入観無しで見れば結構楽しめる良作だと思います。

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