タロスとミナトン

大人になってから見たストップモーションの印象って子供の頃の記憶とは違ったものでした。コマ撮りのカクカクした動きが子供の頃はやけに怖かった。今となっては懐かしい記憶で、もうそのような恐怖感を味わうことは無くなってしまいました。そういう意味で印象に残ったモンスターは数多いのですが、挙げていたらキリがないので、ハリーハウゼン作品からタロスとミナトンの2体を取り上げてみる。この2体は、青銅で出来ており、無表情であるという共通点がある。

タロスは『アルゴ探検隊の大冒険』(1963)に出てきた青銅の巨人。
水と食料を調達するために上陸した島で、ヘラクレスとハイラスが無数の巨大な像を発見。水と食料以外の物には絶対に手を付けないように言われていたのに像の台座の中にあった神々の宝物に手を出したしまう。すると遠くを見ていた巨大なタロスの像が、ギ、、ギギィーという錆びたような金属音を立てながら、ゆっくりとヘラクレスの方に顔を向ける。

この場面は強烈な印象で、無表情なその顔が怖かった。ストップモーションのぎこちない動きは青銅の巨人には効果的だったように思う。動く時の間接がきしむ金属音も効果的で、見事な巨大な像の動きが出来上がっている。

ハリーハウゼンの作品の中で最も人気が高いモンスターの一つで、海峡をひとまたぎして船を持ち上げ放り投げるなどの大暴れを見せるが、踵の弱点をつかれて以外とあっけない最後を遂げてしまう。いくら動作が遅いからって、弱点の踵を攻められている間中一歩も足を動かさないのはどうかと思うが・・・

ミナトンは『シンドバッド虎の目大冒険』(1977)に出てきた青銅のミノタウロス。
ガイコツ剣士が宇宙人になったような怪物や、剣歯虎、一角原始人、巨大セイウチなどクリーチャー満載の映画なのだが、個人的にはミナトンが一番印象深く、体が人間で顔が牛というその造形はかなりの迫力。魔女のゼノビアに心臓を与えられ動き出し、ゼノビアの家来として働くのだが、その役目の大半は船のオール漕ぎ。頭がでかい!

言葉を話さずBGMに合わせてひたすらオールを漕ぐその姿は、バックに流れる音楽(結構不気味でした)の効果も手伝い、子供の頃に脳裏に焼き付いてしまった。子供の頃にテレビで見たので当然日本語吹き替えだったのですが、魔女ゼノビアの声をやっていた声優さんの、
「ミナトォーン、ミナトォォォーン」
というのがまた印象的で、未だに耳にのこってる。上手だけど大げさな、いかにも昔っぽい日本語の演出でしたね。この独特の凄みのある声は来宮良子さんでしょうか?

どんな活躍をするのだろうとワクワクして見ていたのだが、神殿への入り口の石を怪力で動かしたものの、その石と一緒に落下。下敷きになりあっさりと死んでしまうという最後はちょっと拍子抜けでした。結局他のモンスターとの絡みも無く、「役目は終わった」と魔女に言われて、あっさり見捨てられてしまい、「えっ、これで終わりなの?」と呆然としたのを覚えている。単なる船のエンジン扱いとは残念だった。ミナトンはもっと活躍できたと思うんだけどなぁ。

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