ヒューイ、デューイ、ルーイ

ダグラス・トランブルが監督した『サイレント・ランニング』(1972)に登場する三体のドローン。特撮はジョン・ダイクストラが担当している。

映画の舞台は近未来の宇宙空間。絶滅の危機に瀕している動植物を救おうと、政府は地球緑化計画に基づき、自然環境を再現した複数の大型ドームを宇宙空間に建造していた。そこで育てた動植物を地球に戻そうと考えていたのだが、数年後に計画の中止が決定。バレー・フォージ号の乗組員たちには、ドームを爆破し地球に帰還するようにとの命令が下る。地球へ帰れると喜ぶ乗組員たちであったが、ただ一人植物学者のローウエル(ブルース・ダーン)だけはこの決定に納得がいかず、他の乗組員達を殺害しドームごと逃走しようと計画する。

この映画に登場するドローンたちは宇宙船の修理から植物の世話、さらにはローウエルのポーカーの相手までするという大活躍を見せ、シリアスな物語の中に、どこか穏やかな雰囲気を与える役割を担っている。物語の前半でローウエル以外の乗組員たちが全員死んでしまい、それ以降はブルース・ダーンの一人芝居とロボット達とのやり取りだけで物語りが進行していくという、ロボットなしでは成立しない映画だ。

映画のラストでバレー・フォージ号から切り離され、真っ暗な宇宙空間を漂うドームの中で一人ぼっちで動植物の世話をするデューイ。この姿が本当にけなげで見る者の心を打つ。デューイが最後に一瞬星空を見上げるシーンは本当に切ない・・・

SF映画で「感動する」という事は滅多に無いのだが、この作品は心に焼き付いて離れない。なんとも言えない余韻を残して終わるこの映画はやはり傑作だと思う。

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