マリア

フリッツ・ラング監督『メトロポリス』(1926)に登場する人造人間。
科学が飛躍的に発展した近未来が舞台の映画。一部の資産家たちが地上で優雅な生活を送る一方で、多くの労働者たちは地下の工場に押しやられ、厳重な管理のもとに作業に従事していた。

要するに、「白鳥は一見優雅であるが、水面下では常に足がバタバタもがいている」という有名な話と同じだ。

ある日、地下に降りた社長の息子が労働者たちの悲惨な生活を目の当たりにする。そこで彼は慈悲を説く労働者の娘マリアと恋に落ちる。ストライキの気運が高まりマリアの存在が邪魔になった社長は、マリアを監禁し彼女そっくりのロボットを科学者に作らせる。このロボットをマリアという事にして、事態の収拾を図ろうとしたのである。

マッド・サイエンティストにマリアが生み出されるシーンの映像の美しさが素晴らしい。1926年に作られた映画だが、その美術作品のような映像にはただ驚くばかりだ。ロボットと人間の二役を演じたブリギッテ・ヘルムの演技も見事だが、次から次へと画面に現れる未来世界の映像も見応え十分。独創的でなおかつ神秘的な映像世界が堪能できるこの作品は、完全に時代というものを超越していると思う。

人造人間マリアの、美しいような怖いような何とも不思議な造形には思わず見とれてしまう人も多いのではないだろうか。このロボットのデザインは『スター・ウォーズ』のC-3POの原型になったと言われている。映画に登場した有名なロボットでは最も古いものだが、未だにその美しさは他を圧倒していると言えるでしょう。


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