ジェームズ・T・カーク船長

人気TVシリーズ『スター・トレック』(1966-1969)とその後の映画シリーズでウィリアム・シャトナーが演じている(後に提督となる)。
「宇宙、それは人類に残された最後の開拓地である。そこには人類の想像を絶する新しい文明、新しい生命が待ち受けているに違い無い。これは人類最初の試みとして5年間の調査飛行に飛び立った宇宙船USSエンタープライズ号の驚異に満ちた物語である。」
というナレーションで始まる作品だが、これも説明不要なほど有名。

バルカン星人のミスター・スポック(レナード・ニモイ)、ドクター・マッコイ(デフォレスト・ケリー)などキャラクターも個性的で、毎回趣向を凝らしたストーリーは視聴者を決して飽きさせる事はなかった。この作品の熱狂的なファンは『トレッキー』と呼ばれる。それとも自分で名乗るのか?

元々は制作者のジーン・ロッデンベリーが自分の描きたいテーマをスポンサーの圧力から守るために宇宙を舞台にしたSFを選んだ事から生まれた作品である。この時代にはそういった背景から生まれたSF作品がけっこう存在しており、その元祖とも言える作品がロッド・サーリングの『トワイライト・ゾーン』(1959-1965)である。社会や政治への批判的な作品はこの当時放送での規制が厳しく、自分の本当に描きたいテーマを荒唐無稽と思われていたSF作品の中に取り込むという手段を使ったのだ。人種差別を宇宙人同士の戦いに置き換えれば問題は無いだろうと考えたわけだ、頭いいなぁ。しかし、そんな事には全く気付かずに宇宙船やエイリアンに夢中になっていた俺はいったい・・・

この人気シリーズもジーン・ロッデンベリーが現場から遠ざけられた事により、次第に内容が変わってくる。大人向けのラブロマンスを主題にしたストーリーが多くなり、女性が絡む話が多く作られるようになった。カーク船長が異星の女を誘惑するようなシーンが多く、女好きの好色な船長といったイメージは見ていて非常に不愉快なものでした。案の定、これによって人気は低迷し、放送打ち切りが決定してしまう。

しかし、中央の椅子に座って指揮をとるカーク船長は格好良かった。冒険心をくすぐる、ヒーローと呼ぶに相応しい貫禄。熱血漢で人情家、ちょっと短気なカーク船長と論理的で無感情のミスター・スポックの対比が面白く、これによってストーリーに深みが増していたように思う。SF史上に残る名コンビ、いや、ドクター・マッコイも入れて名トリオとしておきましょう。

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