「味わい」という言葉を使用しましたが、コンピューターグラフィックに対してハリーハウゼンの生み出すクリーチャーには「味がある」とよく言われます。私はCGも大好きで、CGと比べて、特にストップモーション・アニメの方が好きだというわけではありません。今でも『ジュラシック・パーク』(1993)を初めて見たときの衝撃は忘れていないし、『トロン』(1982)などのCG初期の作品も大好き。比較など無意味だと思っています。

CGには出せない「味」とはどういうものでしょうか。言葉で言い表すのは難しいのですが、マウスをクリックして作った、ほんのちょっとしたブレもない完璧な画面とは明らかに違う「何か」があり・・・うーん、何と言えばいいのか、とにかく手作業によってのみ作り出される「味わい」というものは確かに存在するのです。

分かりやすく言えば、コンピューターで描いた絵と手で描いた絵画の違いは誰にでも解ると思います。CGとトップモーション・アニメは同じ特殊効果というフィールドで、最終的な目的も「そこに無い物をあるように見せる」という意味では全く同じなので、トップモーションは時代遅れの技術で、CGは最先端と思う人も多いでしょう。確かにそういう考え方も間違ってはいないのですが、トップモーションには職人技によって作り出される独特の味わいがあるのもまた事実だと思います。

理解出来ない人には何を言っても無駄かもしれないし、ハリーハウゼンの作品を知っていても、「あー、あの怪獣がカクカク動くやつ?」とか言われるのがオチかもしれない・・・だが、CGに目が慣れた今だからこそ、もう一度これらの作品を見て欲しい。ファンタジー世界の住人たちの動きとしては決して不自然ではないし、むしろ新鮮にうつるかもしれない。そして、人形アニメ特有の手作りのぬくもり、暖かさというものを感じ取ることが出来る人もきっといると思います。