物語はペライアス王が、預言者から神々の王ゼウスの言葉を聞く所から始まる。

「神々の王ゼウスが灰で示された未来を読もう。世界の果てに大木があり、枝に羊の頭と毛皮がかかっている。神々の輝く宝物、黄金の毛皮だ。」
「今夜の運勢を聞かせろ」とペライアス。
「あなたは征服者になる。テッサリー王国のアリスト王を倒し、王位に就く。しかもゼウスの御意志なので容易く成功する」
「ゼウスの加護があるなら剣などいらん」
「だが、ペライアス。いったんは王位を手に入れるが、アリスト王の子供に奪い返される」
それを聞いたペライアスは、
「ならばアリスト王の子供を殺す!」

そして、ペライアスは軍隊を率いてテッサリー王国を攻める。

このシーンはなかなか豪華。
ゼウスの加護があるペライアスは次々に敵を打ち倒していく。やがて神殿内部に攻め入ると、そこで祈祷中の王女ブライシーズを見つけ話かけるが、神の使いが現れペライアスに告げる。
「お黙り。祈祷中よ。妹と殺された王のために」
「女神は彼女の願いを聞き届けたか?」とペライアス。
「ええ」
これを聞いたペライアスは、
「馬鹿な!」の一言で王女を刺し殺してしまう。

典型的な悪党だが、そこまでやるとは・・・( ̄- ̄;)

「これは、ゼウスのご意思だ」と言うペライアスに、
「ちがう、これは貴方の意思よ。ゼウスが貴方に与えたのは王国だけ。」
そして神の使いは、
「20年後に『片方が裸足の男』が復讐に現れるが、あなたに神の加護は無い」とペライアスに告げる。
「片方が裸足の男?」
「命拾いした王子。ジェイソンよ。ジェイソンを殺すのはやめなさい。あなたも命を失うことになる。」

要するに、「ゼウスの加護で王位に就く」と言われて調子にのったペライアスが王国を攻めたまではよかったが、ゼウスの意思は国を与えるという事だけで、王女を殺したのはやりすぎという事だ。しかも20年後には生き残った王子に復習される運命で、その時はゼウスの加護は無いという・・・

「ジェイソンを殺すのはやめなさい。あなたも命を失うことになる」って、そんな事言うのだったら、「命拾いしたジェイソンが片方裸足で現れる」なんてわざわざ教えなければいいのに・・・神々の気まぐれによって人間がもてあそばれる、というのは典型的なギリシャ神話のお話。

実はこのテッサリー王国の神殿のシーンには双頭のディオスキロが登場する予定でした。地下に住む番犬という設定だったのだが最終的に見送られ、『タイタンの戦い』でメドゥサの宮殿の番犬として登場する事になったのです。

『アルゴ探検隊の大冒険』や『シンドバッド』、またそれ以降のファンタジー作品などの物語のベースとなったアイデアは、基本的には同じものらしい。共に黄金の毛皮を探す、というアイデアが前提となっており、骸骨やグリフィン、メドゥサ、ハーピーなどもこの頃からハリーハウゼンの構想にはあったという事です。

場面は天上界へと変わる。

池、というか水槽のような物の水面に、下界の様子を映して眺めていた全能の神ゼウスと妻のヘラ。ヘラは「ジェイソンを助けたい」とゼウスに申し出る。ゼウスはしぶしぶ条件付きでジェイソンを助けることを認める。それは、殺された王女がヘラの名前を呼んだ回数だけ助ける事ができるというもの。その回数は5回。これでジェイソンは冒険の間、5回ヘラに助けられることになる。

そしてあっという間に20年が過ぎ去り、映画の場面は20年後の下界へ。

そこには、一人馬にのって湖の近くを散策するペライアスの姿があった。ここでヘラが現れ、馬を脅かしペライアスを湖に落としてしまう。さらに底から足を引っぱり溺れさせる。それを見ていた一人の若者が湖に飛び込みペライアスを助ける。命を救われたペライアスがその男の足下を見ると、片方の足には何も履いていなかった。ペライアスはその若者がジェイソンであることを悟る。20年間恐れ続けていたことが現実になろうとしていた。

当然ジェイソンは目の前の人物が敵のペライアスであるとは知らず、
「自分はテッサリーの正当な後継者だ。ペライアスを殺し国を取り戻すから力を貸して欲しい。だが、民衆の信頼を得るためには神の奇跡が必要だ。病気を直し、平和と繁栄をもたらすといわれている神々の宝『黄金の羊毛皮』を手に入れれば、民衆も長年の悪政を忘れ、勇気づけられる。」
とペライアスに言う。
それを聞いたペライアスは、
「ペライアスのことはひとまず忘れて、まず神々の宝物である黄金の羊毛皮を手に入れろ」
とアドバイスする。世界の果てに行かせれば、その間は自分の身は安全だと思ったからだ。しかし、ジェイソンが本当に『黄金の羊毛皮』を見つけて持って帰ってくるとまずいので息子のアカスタスをジェイソンの旅に同行させる事にした。

その夜、ジェイソンと予言者が何やら信仰について語り合っているが、無神論者であり神など信じようとしないジェイソンに対して予言者がとった行動は、いきなりその場で巨大化し、なんと、手のひらにジェイソンを乗せて天上界へとつれて行ってしまう。予言者の正体はヘルメス神だったのだ。そこでジェイソンは巨大な神々とさまざまな会話をかわし、女神ヘラから黄金の羊毛皮はコルキスにあるという話を聞く。

こんなことすれば誰でも信じるだろう、信仰とはいったい・・・