黄金の羊毛皮の話

昔、テッサリアの国にアタマス王と王妃ネペレが住んでおり、二人にはプリクソスとヘレという二人の子供がいた。アタマス王はネペレに次第に冷たくなり、ネペレと離縁して、別の妻をめとり、二人の子供を産ませる。
ネペレは自分の子供たちが、継母によって殺されそうになっている事を知り、継母の手の届かない所へ子供たちをおこうと考えた。ヘルメス神がそれを助けるために、黄金の毛皮の牡羊を彼女に与える。その羊は二人の子供を背にのせたまま空高く舞い上がり、遠く東へと飛び去っていった。

ヘレは途中で海に落ちてしまうのだが、プリクソスはコルキスの町に到着する。
プリクソスはこの国の王アイエテスに暖かく迎えられた。アイエテスの娘を妻とし、羊を生贄としてゼウスに捧げると、その黄金の毛皮をアイエテスへの贈り物とした。アイエテスはその毛皮を神に捧げた森の大木に打ち付けて、眠ることのない竜にその番をさせる事にした。

やがてプリクソスは死に、その霊魂は毎晩のようにギリシャの勇士たちの夢の中に現れては、故郷へ帰れるようにして欲しいと懇願するようになる。彼の霊魂は羊の毛皮に繋がれており、願いを叶える唯一の方法は、黄金の羊の毛皮をコルキスから取り戻す事であった。

これが、コルキスに黄金の羊の毛皮が存在する理由であり、コルキス遠征の、そもそもの話の始まりである。