主役は若き日のベッドフォード、恋人のキャスリン、そして彼らの隣に住む、全然それっぽくないマッド・サイエンティストのカボール、陽気なオヤジだ。
投機に失敗したベッドフォードは戯曲を書いて一発当てようと、恋人のキャスリンには自分の家だと嘘をついて、郊外に屋敷を借りて住んでいた。結婚を躊躇するベッドフォードは「借金返済のために屋敷を売らなければならない」という話しをしてごまかすのだが、ベッドフォードが留守の間にキャスリンは、隣に住むハゲオヤジのカボールに屋敷を売るという約束をしてしまったから大変。結婚資金が出来ると喜ぶキャスリンと大慌てのベッドフォード。
ベッドフォードがカボールの所へ訪ねて行くと、そこで完成したばかりの大発明カボライトの説明をされ、それが重力を遮断するための物質である事を知る。その効果に驚いたベッドフォードはそれを利用して商売で儲けようと考えるが、カボールの目的は一つ。重力を遮るその物質を利用して宇宙船を作り、月へ行こうというのだ。月には良質の金脈があるという話を聞いたベッドフォードはカボールと共に月へ行く決心をする。
映画を見ると解るのですが、この辺りは掛け合い漫才のようなやり取りになっています。カボールと一緒に仕事している人達は何者なんだろう? 一人は庭師のようだが・・・
月旅行の話を聞いたキャスリンは怒って出ていってしまうのだが、出発直前に屋敷がベッドフォードの所有物でない事がばれてしまう。彼を問いただそうと訪ねて行くと、宇宙船は今まさに飛び立とうとしていた。「そこに居ては危なーい」というわけで、宇宙船の中に引きずり込まれてしまうというお約束の展開により、めでたく三人そろって月世界旅行へと出発することになった。
三人を乗せた宇宙船はいきなり屋根を突き破って飛び出し、月へ向かってまっしぐら。その早いこと。宇宙船内の描写で無重力により体が浮かび上がる場面は最初だけで、その後は普通に重力があるという・・・この時代のSF映画ってほとんどがこういう描写。そしてキャスリンが宇宙船の床下を開けると、そこから鶏が現れる。「これで新鮮な卵が食べられる」って、いつの間に鶏など連れ込んだのだ?
この宇宙船、名前をスペース・スフィアという。重力を遮るための可動性のブラインドが付いた窓と、着陸時の衝撃吸収用の脚が四方八方についたその形状は、科学的考証などそっちのけだが、とにかくそのデザインは秀逸の一言。あっという間に月に到着した宇宙船は、月面に突っ込んでゴロンゴロンと転がり、月面の突起物にぶつかって止まる。絶対に中の人間は即死だろうというものすごい着陸の仕方だが、何故かこれが素敵だ。しかし、この映画はあまりにも突っ込みどころが多すぎて、あまりそればかり言ってると悪口に聞こえそうだからこれ以降は自粛することに決めました。
三人が宇宙船の窓から見た月面の風景は、これからの冒険に期待を抱かせるのに十分な美しさ。