宇宙服が二人分しか用意していなかったので、キャスリンを船内に残し、二人で月面探索へ出かける。ここで冒頭で宇宙飛行士が発見したイギリス国旗を月面に立てる。

しかし、この宇宙服・・・カボールの家にあった単なる潜水服なんだが大丈夫なのか。しかも手袋をしていない・・・。潜水服に素手という姿ではしゃぎながら月面探索をする二人は太陽光を地下に取り込むための月面の装置を発見する。ゆっくりとその装置が開くのだが、このデザインもまた素晴らしい。

これを見た誰もが気が付くと思いますが、『2001年宇宙の旅』(1968)にこれとそっくりな場面が出てきます。この映画の影響というよりもパクリでは? しかし、この映画のわずか4年後に、あれほどの映画が作られたとは驚きですが、逆に考えるとこの『月世界探検』は『2001年』のわずか4年前の作品とは思えないほどレトロチックな映画です。右側の写真が『2001年宇宙の旅』。

カボールがつまずいてこの装置に落下するとガラス?が割れて、その下にものすごく深い地下都市への入り口が現れる。
ヘルメット無しで呼吸が出来ることが解った二人は地下深くへと探検に出かける。なんだか『地底探検』(1959)を思わせる展開だが、男はこういう冒険物が好きなのだ。プリズムが反射する地下通路に地面からニョキニョキと生えている7色に光る鉱物などのデザインは幻想的な風景で、そこを歩く二人をロングショットでとらえた画面のレイアウトはそれだけで冒険心をくすぐられる。

二人の前に月の住人であるセレナイトが姿を現す。
月人は昆虫のようなデザインで、セレナイトの地下都市もそれに準じ、入り口のドアなどは蜂の巣のような八角形のデザインになっています。ちなみに、セレナイトのデザインのベースになったのはアリ

いきなりセレナイトに殴りかかるベッドフォード。
「戦ってはいけない、対話のチャンスだ」というカボールとの性格の対比が、この映画のストーリーに幅を持たせている。


二人が月面に戻ると、宇宙船が無くなっており地面には引きずって移動した跡が残っていた。その跡を辿って行き、二人は地下都市への入り口を発見する。どうやらキャスリンを乗せた宇宙船はセレナイトの地下都市に運ばれてしまったらしい。
この入り口のドアは二人が両手で左右に引っ張るだけで開いてしまう。

そんな馬鹿な・・・そもそもこの二人、どうやって月面に戻ったのだろう?

その頃、地下に運ばれた宇宙船には無数の小さなセレナイトが群がってキャスリンを連れ去ろうとしていた。開いたドアから二人が地下へ入るとそこには蜂の巣のような世界が広がっており、地面から生えたキノコやクリスタルのような突起物、そしてムーンカーフといった芋虫のような怪物が登場する。
ハリーハウゼンらしいモンスターというよりも、単なる芋虫のお化けだがなかなかのインパクトだ。

ベッドフォードがこの芋虫と戦っている間にカボールはセレナイト達に連れ去られ、そこで捕らわれていたキャスリンと対面する。装置に入れられたキャスリンをセレナイトの側から見るとガイコツになっている・・・観察されているという事か。
あはは、こんな場面でガイコツのモデルアニメが見られるとは嬉しい。ファンサービスでしょうか? ちなみにこの骸骨は前作『アルゴ探検隊の大冒険』で使用したモデルでアニメートしているので、良く見ると怖い顔してます・・・とてもキャスリンとは思えない。

月の住人セレナイトは、クローズアップのショットはモデルアニメだが、それ以外の小さいセレナイトがうようよ出てくるような場面は、着ぐるみを着たエキストラの子供達が演じている。

これは、言われなくても100パーセント気がつく。もう見たまんま子供だし。

俳優が着ぐるみを着て演じるのを嫌ったハリーハウゼンだったが、これだけ多くのセレナイトをストップモーションで描くのは時間的に不可能。残念だが、これは仕方がないでしょう。

一方のベッドフォードはセレナイトが芋虫を電気銃で殺してくれたおかげで命拾い。これはベッドフォードを助けたのではなく、食用に芋虫を殺したという事らしい。思いっきり骨だけ残されてるし、この骨を見ると芋虫では無いという事が解る。