航海中の船の上空に奇妙な鳥が現れるところからこの物語は始まる。
その鳥が落としていった黄金の銘板を拾い上げたシンドバッドは、「悪魔の物です。不吉だから海へ捨てて下さい。」と言う部下の助言にもかかわらず、「これは私がもらっておく。」と言い、それを首に下げて自分の物にしてしまう。その夜、シンドバッドは悪夢にうなされる事になる。
この場面では、雷鳴とともに姿を現す魔術師とコウモリのような怪物。そして魔術師に捕らわれてしまう掌に目が描かれた女性、巨石、王冠、自身の物とは別の黄金の銘板など、この物語のキーワードとなる物が次々と夢の中に現れる。一方外は嵐で船は航路を見失ってしまう。
翌朝、マラビアの国へと流れ着いたしたシンドバッドが「神によって導かれたのだ」と、そこへ上陸すると、魔術師クーラが現れ、黄金の銘板は自分の物だから返せと言う。いかにも怪しげな風貌で高飛車な態度の男を当然のように信じないシンドバッドは、クーラから馬を奪い逃走。従者の馬を使い追いかけてくるクーラを振り切って王国の城内に逃げ込む。
マラビアでは黄金の仮面を付けた王が国を治めていた。彼は黄金の銘板の謎を解こうとした時に部屋に飛び込んできた火の玉に顔を焼かれ、それ以来仮面を付けての生活を余儀なくされていたのだ。そして、それは魔術師クーラの仕業であった。シンドバッドの胸に下がる黄金の銘板を見た国王は、共通の的を倒そうとシンドバッドに協力を要請する。国王も黄金の銘板の一つを持っていたのだ。シンドバッドと国王、そして何処かに存在する三つ目の黄金の銘板を全て手に入れた者は、絶大な権力を得ることができると言う。
ちなみに、この王様を演じているダグラス・ウィルマーという役者さんは、『アルゴ探検隊の大冒険』で、悪役ペライアスを演じていた人。この映画の最後でちょっとだけ素顔が映ります。
やがて、それが海図であることが判明すると、国王は船長であるシンドバッドとの出会いが運命であると確信。二人は早速出航の計画に取りかかるのだが、作戦を練る二人をこっそりと見察していたのが、クーラの手先であるホムンクルス。船の上空から黄金の銘板を落としたのは鳥ではなく、この背中に羽の生えた小さな生物だったのだ。慌てたシンドバッドがホムンクルスを捕らえると、それは灰となって消滅してしまう。クーラに計画を盗み聞きされたと悟った二人は急いで出航の準備を進める。
ホムルンクスとは人々が錬金術の存在を信じていた時代の概念で、物語によっては女性であったり、精霊であったりすることもあるが、基本的に人間によって造られた小さな人工生命体の事を指している。ハリーハウゼンはこの設定を上手く生かして、魔術師クーラの手先として登場させています。
出発前夜、シンドバッドは、ある店の主人に自分の息子を航海に連れて行ってくれと頼まれる。その息子は名前をハロウンといい、いわゆる金持ちのドラ息子。酒飲みのぐうたらなので、航海に出して根性を鍛え直して欲しいという事だ。
一度は断ったシンドバッドであったが、店の使用人が彼が夢で見た「掌に目が描かれた女性」である事が解ると、彼女も連れて行くという条件で、息子を引き受ける事を承諾。そしてこのぐうたら息子が、この映画でのお調子者の役柄を演じることになる。
ここでマリアンナ(キャロライン・マンロー)の登場となるわけですが、飲み物が乗ったお盆を持って現れたその姿はとても召し使いとは思えない。この人の仕事って絶対にそれだけじゃないよなぁ、と思わせる衣装とグラマーな肉体。
子供の頃この映画を見たのですが、シンドバッドは覚えてなくてもこの人の風貌と、その前歯だけはずーっと記憶に残っていました。個人的に特別好みというわけではないのですが、それほど強い印象だったということ。顔も濃いしね。
マリアンナの姿を見た後に召使いや奴隷と言われてもピンとこなくて、この人のお仕事を良く理解出来ていなかったように記憶しています。それもそのはずで、最初こそ奴隷という身分であったものの、着せ替え人形の様に衣装を交換しながらそのグラマーな肉体を披露するというのが、この映画での彼女の役割。常に胸元が大きく開いた衣装を着ていて、けっこう動き回るものだからポロリと見えてしまわないかと心配(期待)してしまう。元奴隷という身分にも関わらず、シンドバッドに見そめられるというこの映画のヒロインだったのです。
ヒロインといっても、『恐竜100万年』のラクエル・ウェルチのような活躍をする訳でもなく、完全なお色気担当といった扱いだったのが残念。『恐竜100万年』が大ヒットし、次の『恐竜グワンジ』がお色気ゼロで失敗・・・今回キャロライン・マンローが起用された意図は言わずとも分かるでしょう。