オープニングの音楽はシリーズ中では最もアラビアン・ナイト的。
疫病が蔓延しているとの理由で城が閉鎖されていて城内に入れないシンドバッド。魔女ゼノビアの息子ラフィのテントで夜を過ごすことになったシンドバッドの元に現れたのは、ガイコツ剣士を宇宙人(昆虫か?)にしたような代物。ハリーハウゼンが言うには、骸骨剣士の肉付きバージョンとの事ですが・・・何だか小さくて迫力がない。
剣士を倒したシンドバッドの前に城を抜け出したファラー姫が現れる。ファラー姫を連れて船上に逃げたシンドバッドは姫からカシム王子が怖ろしい呪いにかかっている事を聞く。
ジェーン・シーモア演じるファラー姫は可愛い。前作に比べてお色気度はダウンしている作品ですが、個人的には前作のマリアンナによる露骨なお色気路線よりも、後半に出てくるファラー姫のセミヌードの方が全然セクシーだと思う。
カシム王子の呪いを解くために伝説の賢者メランシアスを訪ねようとする一行の元へ魔女ゼノビアが現れる。ファラー姫がゼノビアの前でうっかりメランシアスの名前を出してしまったばっかりに、全編を通して魔女に後を追われる羽目になってしまう。
ゼノビアはシンドバッドを追うために一匹で軍隊にも匹敵する戦力を誇る青銅の雄牛ゼノビアを製造する。出航の夜、不気味なBGMをバックに一匹で船のオールを漕ぎ、見張りの船に体当たり。溺れる兵を串刺しにして持ち上げる姿はこれからの活躍を期待させるのに十分なド迫力。
映画では、ゼノビアが心臓を入れるシーンだけでミナトンが誕生するのですが、ハリーハウゼンはこのシーンを『フランケンシュタイン』のように製造される過程を描きたいと考えていました。予算と時間の都合で実現できなかったのですが、ストーリーボードを見る限りでは、かなりドラマチックなシーンに仕上がりそうだったので、撮影されなかったのは残念。
メランシアスの住む島へ上陸し、島の住民達が敵だと思って、皆で石をぶつけてくるという無意味なシーンの後、最初に彼らを出迎えてくれたのがメランシアスの娘ディオーネ。ちなみにディオーネを演じているタリン・パワーはタイロン・パワーの実娘。やけに高飛車な態度で、テレパシーでメランシアスと会話をする様子が安っぽいB級SFみたいです。ヒヒに変化したカシム王子がファラー姫以外で初めてなついたのがこのディオーネだった。メランシアスとディオーネを仲間に加え、一行は北の果てにあるというアリマスピの神殿に向かう。
しかしメランシアスって全然賢者らしくない・・・どちらかと言えば、マッド・サイエンティストみたいです。ちなみにこの役者さん、名前はパトリック・トルートンといい、『アルゴ探検隊の大冒険』で怪鳥ハーピーに襲われていた盲目のフィニアスを演じていた人です。
ヒヒは柔らかい毛で覆われているため、アニメートする際に指の跡が付いてしまう。オブライエンの『キングコング』では、見方によっては毛が逆立ったような不思議な効果をだしていたのですが、ハリーハウゼンはその不自然さを避けるために、なるべくカメラに映らない後側からモデルを動かしていたそうです。
だんだんと人間性を失い、凶暴化しつつあるカシム王子を連れて航海は続く。賢者メランシアスは「これは時間との戦いだ、もっとスピードはだせんのかー」とほとんどヒステリー状態。
一方のゼノビアは魔力でカモメに変身。シンドバッドの船に偵察に乗り込んでくるが、ヒヒが動物的な感で彼女の存在に気づき、メランシアスに捕らえられて小さな瓶に入れられてしまう。
「わしが尋問して、王子をヒヒに変えた秘密を聞き出してやる」
危険だからと言い、皆を部屋の外へ出してゼノビアと対決するのだが、ここでの会話のシーンは賢者とはおおよそかけ離れたマヌケなもの。
「ここへ来た目的はなんだ?」
ゼノビアが答えないで黙っていると、
「この地図か?」
と言い、目的地の地図を見せてしまう。
さらには、
「この鍵か?」
と、ご丁寧にも神殿の鍵まで披露してしまう。
「どうしてここにあると解った?」
って、ゼノビアは何も知らないのに、たった今全部お前が教えたんだろう。
さらには、
「カシム王子を戻す方法をお前が教えれば、我々は『アリマスピの神殿』に行かなくて済むのだぁぁー」
と絶叫しながら、行き先までしっかりと教えてしまう。
この間、ゼノビアは一言も話していないのだ。
あまりの馬鹿馬鹿しさに見ているほうがうんざりしてくる。
「何の薬を使ったのだ?」
とメランシアスが聞くと、今度はゼノビアが、
「無い、無いー、ロケットがなぁーい!」
と薬がロケットに入っていた事を自ら暴露。
ロケットを見つけたメランシアスは、ほんの数滴しか残っていないにも関わらず、蜂にそれをなめさせて薬の効果を試そうとする。
「やめてー、量が足りなくなるー」というゼノビアを無視して蜂に薬を与えると、その蜂は次第に巨大化する。びっくりして動けないメランシアスは、蜂が大きくなっていくのを黙って見ている事しかできない。
結局、巨大化した蜂に襲われてゼノビアを閉じこめておいた瓶を倒してしまい、秘密を全部知られてしまったゼノビアにも逃げられてしまうというお粗末さ。
これって、もう少し何とかならなかったのかなぁ・・・
映画にしてはあまりにもひどい台本。若手芸人のコントみたいだ。