気味が悪い骸骨の渡しによって、メドゥサの宮殿がある島へ到着した一行が最初に遭遇するのが、『アルゴ探検隊の大冒険』での登場が見送られたという双頭の犬ディオスキロ。宮殿の外見はイタリアの神殿をそのまま使用したもので、ロケ地は『アルゴ探検隊の大冒険』でコウモリのような怪鳥ハーピーをと捕らえたシーンに使われた場所と同じ。
ディオスキロとの対決は、非常によくできたストップモーションですが、このアニメーションもジム・ダンフォースの手によるものです。

ディオスキロのモデルは冥府の番犬ケルベロス。50または100の頭を持つと言われているが、一般的には三頭で尾が蛇の形をしており、頸の回りには無数の蛇の頭が生えているとされる。ヘラクレスによって捕らえられたという話が有名。

ディオスキロを倒し、いよいよメドゥサの住む迷宮へと侵入。

それまでの映画でのメドゥサといえば、美女の頭のうえに動かない蛇がブラン、ブラン、ビヨーンってものばかりだったのですが、ハリーハウゼンのメドゥサは醜悪な顔に下半身が蛇といういかにもモンスターといった造形で登場。頭の上の蛇が一本一本全てアニメーションで動かされており、下半身を両手で引きずりながら登場する場面はトラウマになるほど恐ろしく、この映画で最も印象に残るシーンかもしれない。

じっくりと時間をかけて見せる対決シーンは、この場面だけでもこの映画を見る価値があると思えるほど。真っ赤に燃える炎によってのみ照らし出される地下迷宮の不気味な雰囲気と、下半身の蛇部分から発せられるガラガラヘビのような効果音が恐怖感をあおる。その姿を見た者は石に変えられてしまうという設定が醸し出す緊迫感。固唾をのんで見守る、とはまさにこのシーンのためにあるような言葉。全てのハリーハウゼンの作品の中でも、屈指の出来映えといえるのではないでしょうか。

この戦いは、神様からもらった盾にメドゥサの姿を映して戦う顔の濃いペルセウスが、石に変えられる事なく、剣でメドゥサの首を切り落として決着する。

息詰まる対決が終わり、討ち取ったメドゥサの首を袋に入れ帰路についた一行であったが、待ち伏せしていたカリボスが袋に詰めたメドゥサの頭部を剣で一突き。したたり落ちる血からサソリの怪物が生まれ、ペルセウスたちに襲いかかる。『黒い蠍』(1957)を思わせるこのストップモーションは、ウィリス・オブライエンのへのオマージュでしょうか。

この戦いで、カリボスはペルセウスによって殺されてしまう。ボスを失い統率がとれなくなった部下たちの住処に、なんとフクロウのブーボが突進。素早く飛び回る小さいブーボを誰も捕らえる事ができず、大慌ての部下たちを後目にブーボはペガサスの救出に成功する。やがてブーボがはじき飛ばしたたいまつの火が辺りに燃え移り、アジトは全焼。全ての敵を倒したペルセウスに残された仕事は、生け贄にされるアンドロメダの救出のみとなった。