ウィリス・H・オブライエンは1886年生まれ。という事は、『キング・コング』製作の時点ですでに40代後半という年齢。
勤め先での昼休みに、粘土で作ったボクサーの人形で同僚と試合して遊んでいた時にモデルアニメのヒントをつかんだのだという。粘土でのアニメーションを思いついた彼は、恐竜と原始人の人形を粘土で作りコマ撮りで撮影。このフィルムを見て出資者が現れ、初の劇場用短編映画『恐竜とミッシングリンク』(1917)が製作されました。そして、1925年には初の長編映画『ロスト・ワールド』が製作され、オブライエンは映画界で一躍注目されることになったのです。

以下、オブライエンの代表作を簡単に紹介してみたいと思います。

『ロスト・ワールド』(1925)
この映画の最初の見どころは、探検隊が木を切り倒した音に気付いた時のブロントサウルスの反応。ビクッとして長い首を一気に持ち上げる仕草には大爆笑。多分、世界最速の動作をする恐竜でしょう。トリケラトプスに襲いかかるアロサウルスの動きも素早く、横にまわった次の瞬間背中に飛びついている(笑)。足が異常に細かったり手が長かったりと恐竜の造形もどこか不自然。サイレント時代の映画にしては驚くべき作品かもしれませんが、さすがにこれはちょっと古くささを感じさせます。肝心のアニメーションもかなり大雑把な印象を与えるもので(動きが昆虫のようです)、初期のストップモーションの資料映像として見るのが最も楽しめる見方かもしれません。

しかし、登場する恐竜の数も多く、人形アニメという表現がピッタリ(重量感が全く無い)の恐竜たちの動きが可愛らしく、ストップモーションが好きな人にとっては今でもかなり楽しめる作品だと思います。
ジャングルの奥地で太古の恐竜が発見され、それを見せ物にしようとロンドンに連れてきたが逃げ出して暴れる、という展開は後の『キングコング』と全く同じ。言い換えれば、『キングコング』は『ロスト・ワールド』の焼き直しのような作品であるとも言えるし、良く言えばオブライエンの技術の集大成であるとも言えます。

しかし、手元にあるDVDのパッケージに、「ハリーハウゼンの師匠オブライエン」としっかり印刷されているのには何だか・・・やはりハリーハウゼンのネームバリューが必要なのかと。

『ロスト・ワールド』は大ヒットし、オブライエンは続編『Creation』の製作に取りかかります。しかし、結局続編は製作費が掛かりすぎるという理由で中止になってしまいました。