『猿人ジョー・ヤング』(1949)
1949年には『猿人ジョー・ヤング』の製作に取りかかります。ここでのオブライエンの仕事はたくさんのスタッフのまとめ役であり、オブライエンに代わりモデルアニメーションのほとんど(約85%)を担当し、ジョーの素晴らしいアニメーションを仕上げたのが、助手として参加していたレイ・ハリーハウゼンでした。実質上これがハリーハウゼンのデビュー作なのですが、レイ・ハリーハウゼンがアニメートしたジョーの動きは本当に素晴らしく、人間との絡みでも全く違和感が無いのには驚かされます。この作品はアカデミー特撮効果受賞を受賞。1998年には『マイティ・ジョー』としてリメイクされました。
アフリカの奥地でキャンプをしていた一行が巨大な類人猿と遭遇する。だがそれはこの土地で召使い達と暮らす少女ジルが子供の時から育てたゴリラ、ジョーであった。これに目を付けた興行師がジルを説得し、ジョーはハリウッドのナイトクラブへ見せ物として連れてこられことになる。
驚いたのはこの映画でコングと絡む大男の役でボクシングの元世界王者プリモ・カルネラが出演している事。コアなボクシングファンの間では有名なプリモ・カルネラは当時のボクシング界に干渉してきたギャングお抱えのボクサーで、サーカスからスカウトされました。本人が知らない間にギャングの手による八百長でチャンピオンまで登りつめたとされるチャンピオンで、その巨体から「動くアルプス」と呼ばれていました。
この作品でプリモ・カルネラが演じているのはジョーと綱引きで対決する屈強な十人の男達の一人。綱引きに負けて十人の男達が水に落ちる様はバラエティ番組のお笑い芸人さんのようで笑えます。しかもジョーとボクシング対決までしてしまうというサービスぶり。
そういえば、オブライエンは元プロボクサーという経歴もあり、キングコングが恐竜と戦う様子はボクシングを彷彿させるものでした。
ボクシングが好きなので、つい脱線・・・
毎日行われるショーと檻の中での生活にジョーは次第に不満を募らせ、その我慢が限界に達した時、ジョーの怒りが爆発する。檻を破って逃走し、人間に追われるハメになる。
愛嬌のある仕草や檻の中での悲しげな表情、そしてものすごい形相で暴れるジョーを演技させたレイ・ハリーハウゼンのテクニックには脱帽。はっきり言ってしまえば、キングコングよりもジョーのほうがはるかに表情豊かであり、ハリーハウゼンのテクニックは完全に師匠オブライエンを超えています。
それにしてもジョーがナイトクラブを破壊するシーンは凄まじい。この作品は一見の価値あり。
キングコングとジョーの身長差がそのままスケール感の違いとなって現れてしまったような作品ですが、『キングコング』と比較するのは無意味だと思います。この作品は実に爽やかなエンディングでした。
そしてこの映画の後、ハリーハウゼンはオブライエンの元を離れ一本立ちする事になります。