『月世界征服』(1950)
物理学者カーグレイブス博士とセイヤー将軍は、実業家ジムの協力を得て、月ロケット「ルナ号」を完成させる。発射中止命令も聞かずに強硬に発進した彼らは、途中数々のトラブルに見舞われるが、何とか月まで到着する。しかし、着陸時のトラブルによって燃料を使いすぎてしまい、帰りの発射は重量を軽くしなければならないという事態に直面してしまう。月面探索の後、ロケットを軽くするために不要品を捨てるが、もう捨てる物が無くなっても人間一人分だけの重量がオーバーしている。全員が無事に地球へ帰る方法はあるのか・・・

ロバート・A・ハインラインの『宇宙船ガリレオ号』を映画化したこの作品は、ソ連で世界初の人工衛星打ち上げが成功する七年も前に作られました。原作者であるハインラインも脚本に参加しているます。ドキュメンタリータッチでストーリーは地味ですが、しっかりとした科学的考証を行い、月面の描写などはかなりリアルなものに仕上がっています。なんだか、ジョージ・パルらしくない気もするが・・・

印象深いのが、地球の重力圏から離脱する時の乗組員たちのゆがんだ顔。Gがかかってビヨーンって横に伸びる顔に大爆笑。なにもそこまで忠実に再現しなくても・・・アハハハ、このシーンは本当に笑える。

また、ウッドペッカーがアニメーション映画でロケットの原理を紹介するなどのお遊び的要素も楽しい。このあたりはカートゥーンマニアのパルらしい演出。『月世界征服』はアカデミー特殊効果賞を受賞する。この映画の大ヒットにより、ジョージ・パルの方針は決定付けられました。本格的にSF特撮映画のプロデューサーに転向した彼はその後、数々の古典的名作を生み出すことになります。