プロローグ

映画は実写のニュース映像とナレーションで始まる。
「第一次世界大戦。諸国は二つに別れ、まだ未完成の粗雑な武器で戦った」
「第二次世界大戦。地球は二つに割れ、科学兵器による破壊戦争を行った。それらの兵器は地球上では並ぶものがない最終兵器であった」
「そして今、さらなる超破壊兵器による世界戦争の危機が迫っている」


太陽系の惑星の映像に変わり、さらにナレーションは続く。
「信じがたいことだが、人類は火星の高度に進歩した生物に見察されていた」
「冷徹で優れた頭脳が地球を見つめ、侵略計画を立てていた」
「火星人が見察し、研究できる全ての世界の中で、地球だけが緑に恵まれ、水と豊かな大気に包まれていた」
「だが人類は知らなかった。迫り来る運命も、宇宙の彼方から監視され狙われていることも」
「地球が火星に大接近した心地よい夏までは・・・」

このシーンで天体の絵を描いている人はチェスリー・ボネステル。『地球最後の日』(1951)で、アーク号が到着したシーンの脱力系マット画を書いた人です。この人の絵はなんだかアニメっぽい・・・


侵略の始まり

画面が変わるといきなり青白く燃えながら隕石が落下してくるシーン。のっけから特撮ファンのツボを刺激する。

この場面でも「月世界征服」(1950)でロケットの案内役を務めたウッドペッカーが出演しているらしい。隕石が落下してくるシーンで、一番高い木のてっぺんにいるらしいのだが全然分からない・・・

人々が落下現場に集まり出すとそこにはクジラほどの大きさの真っ赤に焼けた謎の物体が横たわっていた。
近くに釣りにきていた天体物理学者フォレスター博士が現場に呼ばれ検証するが、物体の正体はわからない。とりあえず物体が冷えるのを待つために博士は知り合ったコリンズ牧師とその娘のシルビアとともに町へ戻ることに。
火災に備えて地元の人間三人が現場に残り、博士は土曜の夜のお楽しみのダンスパーティーに参加、のんきなものだ・・・

この作品では、まだ新人だった頃のジーン・バリーが主役のフォレスター博士を演じています。この映画での演技はあまり評価されず、彼は長い間この役を恥じていたそうです。とは言ってもこの作品は彼の代表作の一つであり、最近では彼自身もそれを認める発言をしています。ブームとはいえSFがまだまだ大人の鑑賞に堪えうるジャンルとして定着していなかった時代には、役者としても誇れる仕事ではなかったという事でしょうか・・・実際、食うために割り切ってSF作品に出演していたという役者の話も良く耳にします。

深夜、隕石が冷えた頃に三人は様子を見るために恐る恐る隕石に近づく。その時、隕石の上部がネジのように回転し始める。明らかに物体の内部から人為的な力が働いている。隕石の蓋が地面に落ち、開いた穴から生物の触覚のようなものが現れる。

宇宙人が中にいると悟った三人は白旗を掲げながら近づくが、三人を発見した触覚は無抵抗な三人めがけていきなり殺人光線を発射して焼き殺してしまう。隕石と思われた物体の中には火星人のウォー・マシーンが入っていたのだ。

このキングコブラのような触覚が三人を見回すシーンの効果音はシンバルを反響させて作ったもので、殺人光線の音はエレキ・ギターで作っている。

現場付近から炎が燃え上がっているのを確認した博士は警察官二人と現場へ向かう。だが現場で彼らが見たものは、無惨に破壊された自動車の残骸と地面に残された三人の灰だけになった姿であった。そして、その直後に第二、第三の隕石が落下し始める。火星人の侵略が始まろうとしていた。

軍の飛行機が現場付近に照明弾を落下。照明弾によって照らし出された谷間からゆっくりとウォー・マシーンが姿を現す。そして、辺りを包囲している軍隊にいきなり攻撃を仕掛ける。援軍を呼び、戦車で包囲するが、殺人光線の前に全く歯が立たず、簡単に焼き払われてしまう。敵のあまりの破壊力に軍隊は撤退を余儀なくされる。

同じ頃、世界各地に隕石が落下し、本格的に火星人の侵略が始まった。
ウォー・マシーンの破壊光線を浴びた軍人が消滅する瞬間にガイコツが一瞬見えるという視覚効果が時代を感じさせて微笑ましい、ハハハ。