この映画はビジュアル面で非常に優れた作品だと思います。何よりもまず火星人のウォー・マシーンのデザイン。映画史に残る傑作デザインと言えます。
形状、メタリックカラー、そしてあの金属音とともに天井部分から現れる宇宙船の触覚とその先端についた点滅する目玉。まるでウォー・マシーンが意識を持った生物のように見えます。生き物に例えると、巨大なエイの頭部から蛇が現れたという感じでものすごい威圧感。ウォー・マシーンのデザインとその視覚効果だけでこの映画に魅せられた人も多いのではないでしょうか。

特殊効果はゴードン・ジェニングス。火星人のマシーンは原作では金属製の三脚のような足が胴体がら伸びているもので、脚本の段階では三本足という設定だったのですが、映画では円盤形に変更されました。これは原作に忠実に再現しようとするには予算が掛かりすぎるという理由があったからです。だが、この円盤の最初の登場シーンをよく見ると、円盤の下部から電気的な三本の足のような物が見えているのが確認できます。ウォー・マシーンのデザインは日系の美術監督アル・ノザキ。火星人のデザインも彼の手によるもの。

ちなみに原作での最初の登場シーンでは、「乳搾りに三本足の腰かけが傾いたまま、すさまじい勢いで地面を転がる姿を想像してもらえばいい」とありますが・・・全然解らない。まぁ、火星人のマシーンについてはたくさんの描写があるので、読み進んでいるうちに全体像が解るようにはなっています。中には「竹馬に乗った大釜が人間のように歩く」というのもありました(笑)。
余談ですが、この『宇宙戦争』はレイ・ハリーハウゼンも映画化を企画しており、テストフィルムまで製作していたのですが、資金が集まらずに断念したとの事。テストフィルムの火星人は原作通りのタコ型だったのでジョージ・パルよりは原作に忠実に作ろうとしていたのが伺えます。レイ・ハリーハウゼン版の『宇宙戦争』も見てみたかった・・・

ジョージ・パル版のウォー・マシーンは子供の頃に見て本当に怖かったが、今見てもその恐ろしさは変わりません。

友好目的で近づく見張りの三人を発見し、じーっと触覚が見察する場面(効果音がまた怖い)。そのマシーンが最初の戦闘時に人類の攻撃を受け、そのあと無傷でゆっくり浮上してくるシーンはゾッとするものがあります。そしてその宇宙船が編隊を組ん全てを焼き尽くしながらでゆっくり、本当にゆっくりと辺りを見察しているかのように低空飛行する場面・・・。砲撃を受けると一瞬透明のバリアー(映画の中では「電気的な傘」と表現されていた)が浮かび上がる。

今のCG全盛の時代では絶対にあり得ない演出で、CGが無かったが故に、巨大な模型により重量感のあるシーンが作り出されたのです。

ただ、この場面でヒロインが軍人のためにお茶汲みなどしているのはいかがなものか。こんな危険な場所に女性がいるのはかなり違和感があるが、ヒロインなので仕方が無い・・・腕には赤十字のマークが見えます。