スペクタクル映画のような壮大な効果音と共に画面に登場するビクトリア調のタイムマシンのデザインは秀逸の一言。これほどお上品なタイムマシンなど見たこともないが、見方によっては、後部にパラソルの付いたサンタさんのソリ。細部にこだわって作り込まれたそのマシーンは、実際にジョージ・パルが子供時代に遊んだソリをイメージしてデザインされたとの事。惚れ惚れするような造形美とはまさにこの事で、初めて見たときは、大げさではなく体に電気が走るような衝撃を受けました。個人的には『海底二万マイル』のノーチラス号と並んで最も好きなデザインの一つです。

ジョージはそれに乗り込み、水晶(これが動力源)でできたレバーを引き、未来へと旅立つのであった。


時間の経過を表現するのに天窓を利用するというアイデアは素晴らしいのですが、タイムマシンのメーターがやたらと早く進むのに対し、周りの変化が肉眼で確認出来るほどゆっくりで、ほとんど一致していないのが気になります。やっぱり昔の映画だなぁ、と時代を感じさせる。ちょっと気になるが、まぁ仕方ないか・・・映画全体からすればたいした問題では無いでしょう。
また、ショーウインドウに飾られたマネキン人形の服の変化で時間の経過を表現しているのは、いかにもジョージ・パルらしい演出です。

このマシーンは1970年、MGMによって競売にかけられ、一万ドルで落札されたそうです・・・意外と安い。落札した持ち主が見せ物として利用した後に手放され、三年もの間行方不明になってしまう。1974年にオレンジ郡の中古品店でスクラップ状態になった姿で偶然発見され、映画マニアのボランティアで復元された。

その後、完全に復元されたマシーンはハロウイン・ショーの舞台などで活躍したのち、雑誌や広告などにも登場しその存在感をアピールしています。1984年製作の『グレムリン』ではチラッとその姿を見ることができます。現在はロサンゼルス北部のテーマパーク、マジック・マウンテンにあるという事です。