
映画の撮影中にレイ・ハリーハウゼンを解雇しようとした監督さんがいたそうです。
ハリーハウゼンが他の特殊効果マンと違っていたのは、映画全体に関してかなりの限を持っていたという事が挙げられます。
ハリーハウゼンのアイデアに理解を示し、プロデューサーとして共に作品を作り上げていったチャールズ・H・シニアの存在があったからこそ、自分の作品をコントロールできたのです。
しかし、それを快く思わない監督さんもいたようです。越権行為と考え、ハリーハウゼンを解雇しようとさえしたそうです。監督としては俳優の演技まで指導するハリーハウゼンが気に入らなかったのでしょう。
ハリーハウゼン自身はその監督がだれであったのか決して口にしませんでしたが、それが誰であったのかはファンならば気になるところです。
その監督さんはハリーハウゼンを解雇して欲しいとプロデューサーのチャールズ・H・シニアに頼んだのだが、チャールズ・H・シニアはハリーハウゼンを支持し、「これはハリーハウゼンの映画だ」と監督に言ったそうです。「代わりの監督はすぐに見つかる」とも。
こういうとんでもない事を言った監督って誰だったのでしょう?
ハリーハウゼンの名声を決定的なものにした作品は『シンバッド七回目の航海』(1958)なので、それ以前のモノクロ作品と考えられます。
『原子怪獣現わる』(1953)の時点ではチャールズ・H・シニアと組んでいなかったので、それ以降の作品となると、
『水爆と深海の怪物』(1955)
『世紀の謎・空飛ぶ円盤地球を襲撃す』(1956)
『動物の世界』1956)
『地球へ2千万マイル』(1957)
の4作品ですが、『動物の世界』は映画の一部分の人形アニメだけを担当したので明らかに違います。『地球へ2千万マイル』の監督さんは『シンバッド七回目の航海』でもコンビを組むネイザン・ジュランなのでこれも違う。という事は、『水爆と深海の怪物』のロバート・ゴードン監督か、『世紀の謎・空飛ぶ円盤地球を襲撃す』のフレッド・F・シャーズ監督という事になります。
『水爆と深海の怪物』はチャールズ・H・シニアと組んでの初めての仕事だったので、シニアがどこまでハリーハウゼンを支持していたのかは微妙なところ。
という事は、ヒット作となった『水爆と深海の怪物』の後に作られた『世紀の謎・空飛ぶ円盤地球を襲撃す』での出来事でしょうか。
その監督さんは「あいつは棒を振り回して何をやっているんだ?」と言ったそうです。この棒って、俳優さんに「空飛ぶ円盤」の位置を認識させるための目印に使った棒ではないでしょうか?
そう考えると辻褄が合います。見えないものが相手なので、ハリーハウゼン自身が俳優に演技を指導したのでしょうが、俳優に演技させるのは監督さんの仕事。それが気に入らなかったのでしょう。
というわけで、ハリーハウゼンを解雇しようとした監督さんはおそらく『世紀の謎・空飛ぶ円盤地球を襲撃す』のフレッド・F・シャーズ。
ハリーハウゼンは『世紀の謎・空飛ぶ円盤地球を襲撃す』の監督が自分を解雇しようとした事を否定していますが、聞かれて「イエス」とは言えませんから。