| ロスト・ワールド | 
 | 2009-4-12 12:31 | 
 |  1925年のサイレント映画『ロスト・ワールド』。ストップモーションによる特撮を担当したのは、レイ・ハリーハウゼンの師匠ウィリス・H・オブライエン。この作品が後世に与えた影響は計り知れないものがあるのですが、内容については、ある程度私のホームページで書いているので省略。
 
 というわけで、今回書いてみようと思ったのはこの作品にまつわる一つの大事件。
 
 『ロスト・ワールド』の原作者は『シャーロック・ホームズ』の作者として有名なアーサー・コナン・ドイル。
 コナン・ドイルといえば、神秘主義者としても有名で、「コティングレー渓谷の妖精写真」を本物と認め、『妖精出現』という本まで書いてしまったほど。下がその写真です。
 
 
  これは昔オカルト系の本には必ずといっていいほどよく載っていたものですが、ピンを使って妖精の絵を地面に挿して撮影したというのが真相だそうです。
 
 あのコナン・ドイルがこんな物信じていたのか・・・と思ってしまいそうですが、この写真は後にレタッチされた物で、1917年に撮影されたオリジナルのものはこれほど鮮明に映ってはいませんでした。
 オリジナルの物を見た事があるのですが(ネットで画像検索したけど見つかりません)写りが悪すぎて、まぁ、これなら信じても仕方が無いかなぁ、というほど酷いものでした。コナン・ドイルのファンは一安心といったところ。
 
 この時代のオカルト信者にとって天敵のような存在だったのが、アメリカの奇術師ハリー・フーディニ。偽超能力者やインチキ霊媒を暴き続けた事でも有名です。
 
 事件はフーディニが全米奇術協会のパーティーにコナン・ドイルを招いた時に起こりました。
 
 かなり前に本で読んだもので、手元に資料がないので細部は間違っているかも知れませんが、おおまかな話は次のとおりです。
 
 ドイルは出来上がったばかりの『ロスト・ワールド』のテスト・フィルムをパーティー会場に持ち込み、恐竜の映像を公開します。
 ちょっとしたイタズラ心で、天敵フーディニを驚かしてやろうと考えただけだったのですが、新聞記者たちはこれが本物の恐竜を撮影したものと信じ込み、「生きた恐竜」のニュースが翌日のニューヨーク・タイムズの見出しを飾ってしまったのです。
 その結果、ニューヨーク市民は大混乱に陥った、という話。
 
 うーむ、ちょっと信じられないような話ですが、写真ではなく実際に動く恐竜の映像を見せられてしまい、奇術師たちも否定する事は出来なかったという事でしょうか。その後事件がどうやって沈静化したのか、新聞は誤報を詫びたのかなど、事の顛末はよく分かりません。
 
 これは実際に映画が公開される数年前の事で、ストップ・モーションの技術がまだほとんど知られていない時代。なんだかオーソン・ウェルズの『火星人襲来事件』に似たような話ですね。
 
 『ロスト・ワールド』には実際の動物の映像も使用されていて、それと比較したら恐竜の動きが不自然なのは一目瞭然なのですが、当時の人たちの目には『ロスト・ワールド』の恐竜が本物に見えた、という事ですか・・・
 
 
  
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     | 投稿者 : esme こんばんは。こちらのエントリー、リアルタイムで読ませていただいたのですが、そのうちコメントをと思いつつ10年が経過してしまいました。
 この調子で齢をとっていくと怖いですね。
 ニューヨーク・タイムズの一件、私は最初シネフェックス旧日本版のオブライエン特集で読んだのですが、現在伝わっている話は(日本だけの現象か)大分枝葉が付いてしまっているようです。
 記者が「本物の恐竜を撮影したものと信じ込」んだとか、「ニューヨーク市民は大混乱に陥った」というのは、かなりオーバーではないでしょうか。
 尤も、オーソン・ウェルズの『火星人襲来事件』の一件にしても、現在では「パニックなどなかった」という説が有力なようですが。
 実際の記事は「偽物だとしたら傑作」といった調子で、ニュアンス的には「これは本物の恐竜を撮影したもの? まさかね。でも作り物だとしたら、誰が何のために、どうやって?」といったところでしょうか。
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     | 2019/10/13 23:37 |  
     | 投稿者 : 匿名
	    [mail] こちらが実際の記事です(奇術師協会会合の翌日の記事)。直接URLが書き込めませんが、『The Arthur Conan Doyle Encyclopedia』より、タイトル「Dinosaurs_Cavort_in_Film_for_Doyle」
 紙面全体の画像がありませんが、当時のニューヨーク・タイムズの版組からして、8段組み中の一列でしょうか。
 第一面に掲載されたことは驚きですが(ドイルのネームバリューが大きかったのでしょうが)、記事の扱いはメインではないようです。
 
 こちらが翌日の記事。
 同、タイトル「His_Dinosaur_Film_a_Hoax,_says_Doyle」
 ドイルによる種明かし(フーディニに宛てた手紙の文面)等が掲載されています。
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     | 2019/10/13 23:57 |  
     | 投稿者 : esme すみません。名前の欄が「匿名」になってしまいましたが、上のコメントは私です。
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     | 2019/10/13 23:59 |  
     | 投稿者 : esme 読者の反応は不明ですが、おそらく記者のスタンスと似たようなものだったのでは?現代に例えるなら、CGを使ったフェイク動画に対する反応に近かったのではと想像しています。
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     | 2019/10/14 00:09 |  
     | 投稿者 : パラディオン esmeさん コメントありがとうございます。今日もこれから仕事なので、帰ったらゆっくり検索してみます。『ロスト・ワールド』はともかく、『火星人襲来事件』の件もパニックが無かったというのは意外ですね。まぁ、実際よりも大袈裟に語られているというのは明らかだと思いますけど。多くの伝説(特にオカルト)は記者の作り話やでっち上げが始まりですからね。 |  
     | 2019/10/14 07:26 |  
     | 投稿者 : esme ありがとうございます。二つ目のコメント、メルアド欄に名前を入力してしまったんですね。
 申し訳ありません。
 ロスト・ワールドのアウトテイク映像ですが、Youtubeにもあがっていました。
 タイトルはこちら(↓)
 Lost world unused footage (1925) silent film
 
 ニューヨーク・タイムズの記述からすると、ドイルが上映したのはこの映像の一部かもしれません。
 ロスト・ワールドの頃はまだデルガドの技術が発展途上だった(?)のと、製作モデルが多数だったせいもあってか、恐竜モデルの出来不出来の差が激しい印象がありますが、出来の良い部分のみ見せられたら当時は確かに本物の恐竜に見えたかもしれませんね。
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     | 2019/10/20 23:05 |  
     | 投稿者 : パラディオン 「出来不出来の差が激しい」というコメント読んでから動画みたら、ちょっと笑ってしまうシーンもありましたが、四足で動きの遅い恐竜などは、当時としては結構リアルに見えたのかもしれませんね。画質が相当悪い状態で見たとしたら尚更。今はYoutubeで色々なものが見れる時代ですね。必至に輸入ビデオ等を探していた時代が懐かしく思い出されます。 |  
     | 2019/10/21 21:53 |  | 
 
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こちらのエントリー、リアルタイムで読ませていただいたのですが、そのうちコメントをと思いつつ10年が経過してしまいました。
この調子で齢をとっていくと怖いですね。
ニューヨーク・タイムズの一件、私は最初シネフェックス旧日本版のオブライエン特集で読んだのですが、現在伝わっている話は(日本だけの現象か)大分枝葉が付いてしまっているようです。
記者が「本物の恐竜を撮影したものと信じ込」んだとか、「ニューヨーク市民は大混乱に陥った」というのは、かなりオーバーではないでしょうか。
尤も、オーソン・ウェルズの『火星人襲来事件』の一件にしても、現在では「パニックなどなかった」という説が有力なようですが。
実際の記事は「偽物だとしたら傑作」といった調子で、ニュアンス的には「これは本物の恐竜を撮影したもの? まさかね。でも作り物だとしたら、誰が何のために、どうやって?」といったところでしょうか。