| 黒い蠍 | 
 | 2011-12-5 14:52 | 
 |  えー、今更ですが今回は『黒い蠍』(1957)
 
 esmeさんのコメントがきっかけで久しぶりに『キング・コング』(1933)を鑑賞し、勢いで『コングの復讐 』(1933)も鑑賞。さらにはピーター・ジャクソン版キング・コング(2005)も見て、ついでに『黒い蠍』も見てしまったという・・・
 
 ついでとは言っても、この作品結構好きです。私はテレビ放送を見逃していたので、この作品をちゃんと見たのはわりと最近の事なのです。あまり多くは無い「社会人になってから見た古典SF映画」の一つというわけで・・・
 
 ; ̄ロ ̄)!!
 
 私の言う「最近」とは、ここ10年位、いや15年位前でも最近のような気が・・・
 
 で、「だいぶ前」というと20年位、でしょうか。
 
 25〜30年以上も前の出来事が「昔は・・・」という感覚。
 
 どーでもいい事ですけど、年取ったって事ですかね・・・?
 
 ところで
 
 ウィリス・H・オブライエンの『キング・コング』はやはり面白いですねぇ。これほどの作品でも批判する人っているのですね。私にはさっぱり理解できませんけど。
 
 1933年の作品を「古臭い」って・・・
 
 そんなの見る前から分かりきった事だし、そんな事で評価をしていたら70年代くらいまでは全部古臭いじゃないですか?
 
 うーん、その時代ならではの映像も含めて楽しんでいる私にはやはり理解できない感覚ですね・・・
 
 ところで
 
 ピーター・ジャクソン版も結構好きです。『コングの復讐 』は・・・
 
 まぁ、気が向いたらそのうち書くかも(・。・)y─┛~~
 
 話を戻して『黒い蠍』ですが
 
 この映画の舞台はメキシコの田舎町。火山の噴火によって蘇った古代の巨大蠍が都会に現れ大暴れ。軍隊との攻防を繰り広げる、といった非常にシンプルなストーリーの作品です。
 
 以下は完全に個人的な好み丸出しの感想ですが
 
 この映画は「おぉーすげぇぇ」って感じる所と「オイオイ、それは無いだろう・・・」って感じる部分のギャップが大きかった印象があります。テンションが上がったり下がったりと忙しい映画でした。
 
 凄いところは
 
 巨大蠍が本当に、あまりにも巨大だった事とストップモーションの動きがかなり出来が良かった事。最初に見た時には結構驚かされました。
 
 人間などひょいと一つまみ。さらには電車や戦車を投げ飛ばし、手を伸ばしてヘリコプターまで捕まえてしまうという凄まじい暴れっぷり。
 そして、ハサミの間でもがき苦しむ人間やヘリコプターのプロペラの回転までストップモーションで描かれているという緻密な職人技。
 
 
  地底での蜘蛛や尺取虫?の動き、蠍との対決シーンも素晴らしかったです。
 このシーンは『キング・コング』でカットされた場面を蘇らせようと、当時のモデルを使用して撮影し直したのだとか。
 この「地底探検」のシーンの持つ独特の悪夢的な感覚はSFファンのツボに入ること請け合い。
 
 ハリーハウゼンの『巨大生物の島』(1961)を見た時にも感じたのですが、昆虫類や節足動物の動きってやっぱりストップモーションに向いてますね。同時期の傑作『放射能X』 (1954) と比べても、モンスターの迫力に関しては比べ物にならない程素晴らしい出来栄えです。
 
 これらの仕事のほとんどが、助手のピート・ピータースンの手によるものだそうです。この作品の蠍では分かりませんけど、ピータースンのアニメは水中で動いているような滑らかさが特徴です。DVDの特典映像は必見!
 
 
  で、良くなかったところは
 
 あまりにも出来の悪い合成。蠍の体が透けて見えるしおかしな位置で途切れるし・・・
 
 ガキが不自然にストーリーに絡んでくるところ。何も出来ないくせに「手助けがしたかったんだよぅ」とかイラつくんですけど。大まかなプロット自体は悪くないと思うのですが、突っ込みどころ多すぎです、この作品。
 
 ヒロインが好みでないところ…( ̄  ̄;)
 どことなく肝っ玉母さんっぽい雰囲気の人がチト苦手。老けて見えるだけですかね?
 あと『黒い絨氈」のエリノア・パーカーとかも肝っ玉母さんに見えて仕方なかったです。
 
 同じ特撮カットの使い回しが多すぎ。
 まぁ、これは個人的には何度も見ることが出来て、逆に嬉しかったという・・・でも、別角度で撮影したり、トリミングを変えただけで違うシーンに見せようとしているのがバレバレでちょっと切なかったです。
 
 もっとも不愉快だったのが、蠍の顔のどアップ挿入があまりにも多いところ。
 しかも躍動感が皆無でストップモーション用の蠍と顔が違いすぎ(怒)
 
 
  かなりの間抜け顔・・・
 
 下手な演出の典型、いや、もしかしたら編集段階でそうなってしまったのもしれませんが、コマ撮りのシーンになると2〜3秒後には決まってこの顔が挿入されるのでウンザリしましたよ・・・
 
 蠍の暴れっぷりで燃えて、顔のアップで萎えて、特にクライマックスはその繰り返し。
 
 こうして書いてみると、見どころはストップモーションによる特撮だけのような気もしますけど・・・
 
 まぁ、実際そうかもしれません…( ̄  ̄;)
 
 でも、人間ドラマを中心に描いたモンスター映画も多い中、コマ撮りでこれだけ見せてくれる作品はちょっと珍しいです。
 
 暴れっぷりは怪獣っぽかったですけど、単に巨大生物として描かれているとことは、やはりアメリカ映画だなぁ、といった感想でありました。
 
 
  
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     | 投稿者 : たあ 蠍さんのアップ、見てると結構愛嬌のある顔に見えてくる(笑)一度見るともう一度見たくなるのが何だか不思議です。意外と効果的なカット割りだったのか?なんて思ったりします(爆) |  
     | 2011/12/06 19:06 |  
     | 投稿者 : パラディオン この顔に好感が持てるかどうかで作品自体の印象もだいぶ違ったものになるのかもしれません。最初に見た時は、何がツボに入ったのか何回目かのドアップ挿入で吹き出してしまいました。ストップモーションだけでは尺が足りなくて顔のアップで時間稼ぎでもしたのでしょうか?
 そういえば「キングコング」でも造形の異なる顔のアップを何回か挿入してましたね。
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     | 2011/12/06 20:31 |  
     | 投稿者 : esme 町を襲うシーンの蠍はシルエットだけで表現されてましたよね。たしか、途中で予算が底をついたんでしたっけ?
 
 顔のアップ、私はひたすら無気味に感じましたねー。
 怖いというより気持ち悪いというか。
 キング・コングの実物大モデルは映画では煽りで撮ってる場面が多いので滑稽に見えますが、別の方向から撮影した写真を見ると意外にいい造型のような・・・?
 
 私の場合、特撮もので子役にイラつくことはあまりないのですが、子供の頃イライラさせられたのは「男になんか負けないわ!」的なヒロイン(他の作品ですが)でしたね。
 今はむしろ黙って男についていくようなヒロインにイライラさせられますがw
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     | 2011/12/06 23:15 |  
     | 投稿者 : パラディオン 人件費の安いメキシコで撮影を進めたものの、たしか最後は自宅のガレージで作業したとかそんなエピソードを読んだ記憶があります。一瞬でしたが蠍のシルエット案外迫力ありましたね。顔のアップに対する感じ方は人それぞれで面白いですね。私も初見の時とはだいぶ印象も変わってきているんですけどね。
 気持ち悪い→滑稽→もういい加減にしてくれ、みたいに。
 esmeさんの言う「男になんか負けないわ!」的なヒロインって私は昔も今もかなり苦手ですね・・・。それが原因、というかそれをきっかけに見るのをやめた映画もあるほどです。
 子役やヒロインにイラつくというよりも、そういった演出をする監督さんとかに腹が立っているのかもしれませんけど。
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     | 2011/12/06 23:34 |  
     | 投稿者 : na 確かに子役やヒロインは自分も邪魔に思います。自分は「SF巨大生物の島」でその原作である「神秘の島」にはいなかった女性キャラクター2人がとても邪魔に思いました。この追加された女性2人はどう考えても不必要でした。原作と同じようにキャラは男のみの物語にしてほしかったです。それから「シンドバッド 虎の目大冒険」も同じようなことを考えました。この映画に出てくる賢者メランシアスは足を引っ張てばかりでイライラしました(むしろ、メランシアスの娘であるディオーネの方が役に立っていた)。また、主役のシンドバッドも改めてみるとキッカケ作りと部下の運用ぐらいしかしていません。シンドバッド抜きでほぼ同じ内容の映画でもよかったなと思いました。パラディオンさんは「黒い蠍」以外の映画でイライラしたり、こいついなくても話が成立するなと思ったキャラクターとかこのシーンいらないなと思ったこととかはありますか。 |  
     | 2021/07/24 13:57 |  
     | 投稿者 : パラディオン 基本、SF作品に子役はちょっと…。私のブログで取り上げている古い作品はまだ子役は少ないかと思います。ジュラシックパークシリーズなどは、絶対無事であろう子供といかにも餌顔といった大人が分かりやすすぎて…。まぁそれでも十分楽しんでますけど。 |  
     | 2021/07/26 20:57 |  
     | 投稿者 : na この映画ですが何度見てもパラディオンさんと同じ感想でガキとヒロインが好きになれません。怪獣映画はやっぱり「海獣ビヒモス」みたいにヒロインなどの女性や子供は出てこず、登場人物は科学者や軍人だけなのが一番だと思います。
 黒い蠍もビヒモスもオブライエンの作品ですが「原子怪獣現わる」のせいで低予算で制作せざるおえませんでしたがもし潤沢な予算で制作することが出来ていたら絶対もっといい作品になっていたでしょうね。
 オブライエンはたっぷり予算と時間をかけて作るという作風ですから。
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     | 2021/12/09 13:30 |  
     | 投稿者 : パラディオン 昔は観客を引きつかるために劇中には無いシーンをポスター描いたりしてました。純粋にSFとして楽しみたい人には不要なのかもしれませんが、子供と女性のキャラって現在でも多くの映画で採用されていますね。 |  
     | 2021/12/09 21:03 |  
     | 投稿者 : na この作品の好きなところはゴジラの「反核」みたいなメッセージ性やテーマ性がないところですね。巨大蠍の発生原因は火山の噴火という自然現象で人間側はモンスターを刺激するような問題行動を一切起こしておらずモンスターの方から人間を襲ってきたという展開なのがすごく良いです(人間を悪く書けばいいってものではない)。
 自分は怪獣映画にテーマ性やメッセージ性は求めておらず怪獣映画はエンターテインメント性を重視してほしいと思っているので。
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     | 2025/09/01 18:46 |  
     | 投稿者 : na それから巨大蠍が人間を襲う理由が捕食対象だからというのも良いですね。少なくとも人間側が怪獣(モンスター)を刺激するような問題行動を起こしておらず怪獣(モンスター)の方から襲ってくる場合は人間が捕食対象だからというのが怪獣(モンスター)が人間を襲う理由としては一番納得できると思います。
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     | 2025/09/01 19:41 |  
     | 投稿者 : パラディオン 怪獣映画にテーマ性やメッセージ性は求めていない、完全に同意です。自分はロマンス的な要素も求めていませんけど、やっぱり必須なのですかね。 |  
     | 2025/09/01 20:19 |  
     | 投稿者 : na 自分も同意見です。怪獣映画やモンスター映画にラブロマンスはいらないと思っています。ちなみに自分の理想の怪獣映画及びモンスター映画はこんな感じです。
 (1)内容は人類と怪獣(モンスター)の攻防に話を絞った単純明快で勧善懲悪なストーリー。
 ・テーマ性やメッセージ性が一切ないエンターテイメント性や娯楽性重視。
 (2)メインの登場人物は軍人や科学者で女性や子供、民間人は全員犠牲者や逃げ惑う群衆などのモブで話の本筋には一切絡んでこない。
 (3)ヒロインが存在せず恋愛要素もない。
 (4)恋愛要素に限らず人類と怪獣(モンスター)の攻防という本筋に関係ない要素は一切なし。
 (5)恋愛ドラマなど怪獣を堪能するのに邪魔なドラマが一切なくドラマ部分は怪獣を堪能するのに必要な人間ドラマ(たとえば怪獣を調査・研究したり怪獣に対抗する作戦を立てたりするシーンなど)に絞られている。
 (6)怪獣(モンスター)には人間のエゴの被害者という設定などの悲劇性は一切ない。
 (7)怪獣(モンスター)の出現原因は核実験など人間のせいではなく地震などの自然現象によって目覚めたり隕石に乗って怪獣(モンスター)の方から地球にやってきたりなどの理由で人間は一切関与しておらず人間は一切悪いことをしていない。
 (8)怪獣(モンスター)は人間を捕食対象にしているなど和解不可能な絶対に倒さなければいけない人類に敵対する存在。
 
 黒い蠍は(1)、(6)、(7)、(8)に該当します。
 他にも怪獣ウランや海獣ビヒモスは(1)、(2)、(3)、(4)、(5)、(8)が該当します。
 
 上の8つの条件を全て満たした作品こそ最高の怪獣映画(モンスター映画)だと思います。
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     | 2025/09/03 18:31 |  
     | 投稿者 : パラディオン 昨日コメントしたはずなのに消えている? |  
     | 2025/09/05 20:30 |  
     | 投稿者 : パラディオン naさんの8つの条件を満たす映画が思いつかなかったので色々なAIに聞いてみたら、共通して出てきた答えが当ブログでも書いた『人類危機一髪!巨大怪鳥の爪』(The Giant Claw, 1957, アメリカ)でした。あと『空の大怪獣 ラドン』(1956年)も結構条件を満たしているっぽいです。 |  
     | 2025/09/05 20:38 |  | 
 
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