船乗りシンドバッドの話は今回で最後。これまでのシンドバッドの航海のパターンですが、
異国で商売がしたくて船に乗る
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船が遭難して、ある島に流れ着く
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怪物などに遭遇して危機一髪
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偶然、あるいは自らの機転で一人だけ生き延びる
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その島の王様に出会って気に入られる
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再び商売で成功し、バグダッドに戻る
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遊蕩三昧の日々を送る
ほとんどこれの繰り返し。
第七の航海まで、あと三回シンドバッドは旅に出ます。
背中におぶったら誰も助からないという「海の老人」と呼ばれる人食い、月に一度鳥の姿に変身する悪魔の手先、船をも一飲みするほどの巨大な魚などが登場すますが、残りの航海も似たり寄ったりのお話です。
というわけで、私自身が飽きてきた事もあり、もうこれ以上筋書きは書きません。
最後の第七の航海では27年という年月を費やし、年老いたシンドバッドは旅や冒険に飽きて、これ以降二度と航海に出る事はありませんでした。お金持ちになったシンドバッドが、この世の愉悦や快楽をつくして暮らす、というところで物語は終わります。
さて、最初の趣旨に戻って、最も原作のイメージに近い「シンドバッド映画」は何か、という事ですが・・・
シンドバッドといえば海を舞台にした冒険活劇がほとんど。この類の作品はは原作とかけ離れているという事はもう分かったと思います。
中にはこんなセリフもあります。
「旦那様、私は商人で商売の事以外は何も存じません・・・」
とても、シンドバッドの言葉とは思えませんが、これが現実。
怪物は原作にも結構登場しました。巨大な鳥、巨人、グール(食屍鬼)、巨大な魚、大蛇などですが、シンドバッドは剣を振りかざして戦ったわけでもなく、怯えながらも何とか逃げのびた、といったところ。モンスターが多数登場するハリーハウゼン作品も原作とはだいぶ違います。
私が見た事がある作品に限られますが、一番原作に忠実だと思われる映画はこれ
カレル・ゼマンが1972年に監督したアニメ作品『シンドバッドの冒険』
カレル・ゼマンといえば、以前ブログでも紹介した事がありますが、切り紙を使ったアニメ、ストップモーション・アニメ、アニメと実写の合成など様々な手法を使った作品を作り「幻想の魔術師」と呼ばれたチェコスロヴァキアの監督さんです。
私が知る限り、この『シンドバッドの冒険』で描かれているシンドバッドが原作に最も近いと思われます。
海が恋人で、ちょっと臆病な青年として描かれているシンドバッドは剣を持つ事もありません。船が難破し、遭難の末たどり着いた島で奇妙な出来事に巻き込まれるというストーリーは、ある程度原作に忠実で、ちゃんと七つの話で構成されています。雰囲気は以前にテレビでやっていた「日本昔話」みたいです。
勇敢な船長シンドバッドを期待して見ると違和感があるかも知れませんが、先入観に囚われなければ、物語そのものは結構楽しめると思います。「これが最も原作に近いシンドバッドだ」という事を念頭に置いて見てみるのも一興かと思います。