
モンスター図鑑の第十一弾は、ギリシャ神話のアルゴー船の冒険を映画化した『アルゴ探検隊の大冒険』(1963)に登場し、黄金の羊毛皮を守っていたヒュドラ。
しかし、ギリシャ神話の中で黄金の羊毛皮の番をしている怪物は、単に「竜」と書かれている事が多く、ヒュドラとは別物です。
神話でのヒュドラはアルゴー船の冒険ではなく、ヘラクレスの冒険物語の第二の難業に登場します。
九つの頭を持ち、真ん中の頭は不死。ヘラクレスがそれらの頭を次々と叩き落していくと、そのたびに落とされたところから新しい頭が二つずつ生えてくるという水蛇の怪物。ヘラクレスは、従者の手を借りてヒュドラの頭を焼き払い、不死の頭だけは大きな岩の下に埋めて退治しました。
ハリーハウゼンはこの怪物をジェイソンの適役として登場させたのですが、映画でこのシーンを再現するのは困難だった為、頭は七つに変更されました。
このモンスターのデザインは古代の壷に描かれた絵を参考にしたとか。
下の写真はヘラクレスとヒュドラを描いた壷ですが、ひょっとしてこれかも。

ヒュドラのアニメートの作業も、ハリーハウゼンが最も苦労したものの一つと言われています。
モデルは全長約90センチ! ハリーハウゼンが使用したモデルとしてはおそらくこれが最大。七つのクネクネと動く頭、二股に分かれた尻尾、さらには口やマブタまで動かすことができるモデルを人間の動きに合わせる作業は想像もつかないほど複雑なものだったと思います。
この作品が作られたのは、まだビデオもなかった時代。作業後のチェックが出来ない為、一日の作業が終わると次の日にどこを動かすのかを示すメモを、ヒュドラの七つの頭それぞれに付けていたそうです。
しかし・・・
出来上がった映像はちょっと動きが単調で、苦労の割にはそれほど効果があったとは思えないのは私だけでしょうか? なんか印象が薄いんですけど。
ヒュドラの歯から生まれた七体の骸骨剣士がこの映画のクライマックスで、ヒュドラ自体は骸骨剣士が登場するための伏線、骸骨剣士の前座のような扱いでした。
予算と時間の都合を考えれば仕方なかったのかもしれませんが、心臓を剣で一突きされ、あまりにも簡単に殺されてしまったのはちょっと不自然な印象を受けました。
最後に定番のフィギュア

我が家唯一のヒュドラはお馴染みのエクスプラス製。小さいながらも結構よく出来ています。