
1959年製作の『巨大アメーバの惑星』の原題は“The Angry Red Planet” 直訳では『怒れる赤い星』となります。
このポスターやビデオのジャケットをみてワクワクしないSFファンはいないでしょう。昔は、繰り返しテレビで放送されていたものです。
製作はシドニー・ピンク、監督はこのブログでも何回か取り上げた事のあるイブ・メルキオール。
アメリカ・ネバダ州の宇宙基地に、連絡が途絶えていた火星探査ロケットが突然帰還するところから映画は始まります。
そして、火星探検のシーンは、唯一五体満足で帰還した女性隊員の回想シーンとして描かれています。
この作品が作られた50年代は、低予算のB級映画が大量に生産されていた時代。わずか十日間で撮影されたというこの映画も一目見て低予算と分かるチープな作り。火星の風景や都市などのまるで立体感の無い絵には唖然としてしまいます。
しかし・・・これは、古典SFの名作と言ってもいいかも知れません。
火星のシーンだけが真っ赤に変化するという手法はなかなか幻想的で恐怖感を煽るのにはかなり効果的だったと思います。夢を見ているような不思議な感覚にとらわれるのが心地よい。その画面の見づらさが幸いしてチープさやセットのアラもあまり気になりません。
これ、シネマジックという手法で結構複雑な工程で製作されているらしいのですが、私にはモノクロ・フィルムにオレンジ色のフィルターをかけただけにしか見えませんけど・・・
多数登場するモンスターたちはかなり個性的。

三つ目の火星人、巨大な肉食植物、目玉がクルクルと回転しながら襲ってくる巨大なアメーバ、そしてモンスター・ファンならば誰もが知っているあのコウモリグモ。
英語では“Bat Rat Spider”
正しくは「コウモリ・ネズミ・クモ」ですね。言われてみればネズミも入っているような・・・
このモンスターが操演で動く姿のインパクトといったら・・・よだれを垂れ流しながら奇怪な声を上げるという、そのあまりにも強烈な印象は今でも脳裏に焼きついております。このコウモリグモの造型だけでも、SF映画史に名を残す事ができるのではないでしょうか。
ところで、チュパキャブラスという未知の生物を知っているでしょうか?
体長は1メートルほどで、赤色の体毛、真っ赤な大きな目、後ろ足で立って歩き、背中には棘とコウモリのような羽が生えているというのがその特徴。
これ、ホームページでも書いた話なのですが、チュパキャブラスとして公表された写真の中に、コウモリグモの顔のどアップの写真があったとか・・・たしかに特徴は似ていますがあまりにもお粗末な話ですね。
話を映画に戻して、
このモンスターを糸で操っているのはボブ・ベイカーという人で、元々はジョージ・パルのパペトゥーンのスタッフで、独立後に自分の会社を設立。このコウモリグモや『未知との遭遇』のエイリアンなどを自ら製作、操作していたそうです。
個人的には大好きな映画なので褒めてばかりですが、やはり50年代に作られた低予算映画。アラや突っ込みどころも満載です。
例えば、
女性隊員がほとんど動かない肉食植物の触手に巻かれるシーンなどはもう、何と言ったらいいのか・・・エド・ウッド監督の『怪物の花嫁』(1955)でタコのヌイグルミと格闘するベラ・ルゴシを思い出してしまいました。
かなりトホホなシーンも多いのですが、何度見てもワクワクしてしまうところがこの映画の魅力の一つ。コウモリグモのシーンだけでも見る価値ありです。

この映画を一言で表現するならば、「悪夢」。ゴキブリよりもクモが嫌いな私にとっては悪夢そのもの。こいつのフィギュアだけは絶対に部屋には飾れません・・・