トロイア人の力 |
2007-9-1 18:06 |
『タイタンの戦い』(1981)で引退したハリーハウゼンですが、この映画の完成直後に引退を宣言したわけではありませんでした。その後、チャールズ・シニアと共に製作予定だった作品が存在しています。
タイトルは『トロイア人の力』
原作はトロイア戦争の後日談を描いた『アエネーイス』
1980年にアイデアを発展させ、81年にはほぼストーリーもまとまっていたという事です。そして、1983年にはタイトルが『トロイア人の力』(Force of the Trojans)に正式決定。
ダイダロスとイカロス、スフィンクス、女神ヘカーテ、スキュラとカリブディス、トロイの木馬などギリシャ神話でお馴染みのキャラクターが登場する超大作になる予定でした。
ハリーハウゼンは、幾つかのスケッチとスフィンクスの像、そして一連のシーンの絵コンテまで用意していたのだが、あまりこの作品の制作に乗り気ではなかったらしい。60歳を超えたハリーハウゼンにとって、あまりにも仕事量が多く、肩の荷を降ろしたい気分だったという事らしいのですが・・・
上の写真は、ハリーハウゼンが描いたスキュラです。
スキュラとはカリブディスに面する洞窟に棲む海の怪物で、三重の歯を有する六つの頭と12の足を持ち、船が近づくと一度に六人の船乗りを捕まえて食べたとされています。
ハリーハウゼンのイラストはタコのような足を持ち、その数は六本!
足が六本・・・これは意図的なものでしょう。
こういうこだわりを見ると、ファンとしてはちょっと嬉しい。
このプロジェクトにM.G.M.が興味を示していたということです。監督や、主演女優まで決定していたのですが、結局この作品が制作される事はありませんでした。
しかし、リサーチの結果、当時の観客はもっとバイオレンスな作品を求めていたという事が判明します。
ギリシャ神話を題材にしたエンターテイメント作品は当時の観客の要求とは一致しないという見解で、M.G.M.はこのプロジェクトから手を引く事になりました。
その結果、資金調達が困難になり、このプロジェクトはやがて自然消滅する事になってしまいました。
そして1985年にハリーハウゼンは引退を決意し、結果的に『タイタンの戦い』がハリーハウゼン最後の作品となってしまったというわけです。
この作品には、ジム・ダンフォース、デビッド・アレン、デニス・ミューレンらが集まり、ILMがヴィジュアル・イフェクツを担当する事になっていたという事ですが・・・
ハリーハウゼンが乗り気ではなかったって、もしかしてこの辺りに原因があったりして。
これだけの超大作になったら、制作されたとしてもハリーハウゼンが作品をコントロールするのは不可能だったかも。その結果、ハリーハウゼンらしさが感じられない映画になってしまうとしたら、制作されなくて正解だったのかもしれません。
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