空の大怪獣Q |
2011-7-19 23:13 |
『空の大怪獣Q』(1982)
まずは、この作品のストーリーをビデオパッケージの裏側から。
「Q」とは
“Quetzalcoatl”アステカ文明の神獣で翼のはえた蛇のこと
マンハッタンの高層ビルで窓拭きをしていた男が、突如窓に叩きつけられ首を切断された。二人の刑事が捜査に派遣されるが、二人は全身の皮をはぐというアステカ文明の儀式と同じ方法を使った殺人事件を別件で担当していた。高層ビルを舞台に次々と襲われ殺される事件が続発。やがて巨大な翼のある怪物が姿を現す。同じ頃、小心者の悪党クインは忍び込んだビルの屋上に巨大な巣と卵を発見する。アステカ文明と怪物との関連は?街は怪物出現でパニック状態に。モンスター・ホラーの傑作「Q」ついに日本登場。
「オリジナル予告編付き」
という映画ですが
この作品、少なくとも二回はテレビで見た記憶あります。画面が古臭いので、70年代の作品かと思っていたら1982年の作品だったのですね・・・
私のようなストップモーション・アニメのファンにとってはデビッド・アレンが特撮を担当した、という事で知られている作品かもしれません。ランディ・クックがケツァルコアトルをデザインし、デビッド・アレンがアーマチュアを製作。
ところが
モンスターの登場シーンがあまりにも、あまりにも、あまりにも少なく、ストップモーションで動かされたモンスターを堪能するには至らず・・・残念です。
えー、この作品を見ての感想は、何と言ったらよいのか、その
何を見せたい作品なのかよく分からないので・・・
とりあえず、この映画の主役モンスターの「Q」について。
都会のビルの屋上に巣を作り、卵まで産んでいるのに誰も気づかないとは・・・
それはさておき
ケツァルコアトルといえば、人間の姿で描かれているというイメージがあったのですが、この作品ではほとんど「ドラゴン」のような造形で登場。
うーん、デザインが面白くない、気色悪いだけ。こんなのフィギュアがあっても飾りたくないですね・・・
やっぱりハリーハウゼンは別格!
こういうモンスター映画を見るたびに同じ事言ってますね、私・・・
映画全編を通して古代アステカとの関係をほのめかしてはいるものの、ケツァルコアトルが単なる怪物だったのか、神の類だったのかという描写は無かったように思います。
「Q」目線の空撮映像はよかったですが、マシンガンであっさりやられてしまうとはちょっと弱すぎ、かな? 予算の関係で特撮のパートが少なかったのかもしれませんけど。
もっとも予算に関係なく「人間側の兵器が効かない」といった描写は海外の映画ではほとんど見られません。どんなに凶暴なモンスターでも、あくまでも恐竜の延長線上、といった印象です。
日本のように「怪獣」という概念が無いから、と考えて良いのでしょうか?
なにしろアメリカ版では「ゴジラ」がミサイルを打ち込まれて死んでしまうのですからね・・・
あと、海外のモンスターを見ていていつも思うのが、声がシンプルだなぁ、という事。
「ギャー」とか「ガァァー」とか動物が吠えているといった印象のものがほとんど。これもおそらく同じ理由(怪獣という概念が無い)でしょうけど。
まぁ、これは日本と比べて個性が無いという訳ではなく、リアルさを主眼に置いているからでしょう。
「怪獣」ってやっぱり子供向け作品の概念だと思うので。
・・・脱線したので、話を映画に戻します。
次に作品の内容なのですが
サスペンス・タッチで始まり、別々に進行する二つの事件が、アステカ文明の儀式という接点から次第にリンクし始める。謎を追って進められるプロットは良かったし、前半部分はなかなかテンポもいいなぁといった印象。
でも、肝心の「謎」の部分が映画を見る前からバレバレなので・・・
正体が明らかにされないモンスターの件も含め、これではサスペンス・タッチで描く意味がありませんね。
サイコホラーっぽい演出もちょっとグロいだけで中途半端。なかなか全貌を現さない「Q」にしても、あえてモンスターを見せない事によって恐怖感を煽る、といった効果を意図的に狙ったとも思えません。
結局、この作品で描かれていたのは、クインとその恋人ジョーン、そしてシェパード刑事たちの間で繰り広げられる人間模様がほとんどだったという・・・
この映画の主役は「Q」では無く、クインだったのですね。
このクインという悪党、とても視聴者が感情移入できるタイプの人間とは思えないんですけど?
小心者とはいえ「憎めない」とか「愛すべき」とかいった類の悪役ではなく、本当のダメ男。なんでこんな男に惚れるの? みたいな。
人間のクズのような男の描写を延々と見せられて、結構ストレスが溜まりましたよ・・・
低予算映画だから特撮のパートが少ないというよりも、監督さんが元々こういった人間ドラマをメインに描きたかったとしか思えないほどの充実ぶり(ちょっとだけ嫌味含む)
・・・あ
また書いている作品のこと全く褒めていませんでした。結構好きな作品で、5〜6回は見ているのに・・・
まぁ、いいです。DVD未発売も納得の作品なので。
あと、思った事といえば
キャンディ・クラークは結構かわいいなぁ、とか
役者さんたちが皆プロレスラーみたいだなぁ、とか
ラストの「Q」の落ち方は「キングコング」を意識しているのかなぁ? など
あとは特になし。
そういえば、クインのピアノ演奏を聴いて、なぜかロバート・ジョンソンを思い出してしまいました・・・
|
(トラックバックURL) http://palladion.fantasia.to/step_blog/archive_215.htm
|
コメント |
|
コメント一覧 |
投稿者 : たあ
この作品は未見なので…(汗)
しかし、ラリ-・コーエンといえば「刑事コロンボ」の傑作エピソードのひとつ「別れのワイン」(原案を担当したみたいです)を思い出します。SFよりもサスペンスものが合ってるのかもしれませんね?
画像を見るとデビット・キャラダインも出演しているようですが? まさにB級ですな(笑)
|
2011/07/20 14:58 |
投稿者 : パラディオン
そうなんですよ、ラリー・コーエンってコロンボ・シリーズでは数作品で原案を担当して、結構重要人物だったらしいですね。テレビシリーズの『インベーダー』の企画・監修を任されるなど、脚本家としてはかなり評価が高いようです。監督としてはB級のイメージがありますけど。
この作品のデビット・キャラダインは渋くて格好よかったですよ。色々な作品に出ていますが、SFファンの私としては『デス・レース2000年 』のフランケンシュタインが印象に残っています。
|
2011/07/20 21:35 |
投稿者 : 匿名
ロバート・ジョンソン♪
|
2011/07/21 12:49 |
投稿者 : スダール
おそらくですが1956年ぐらいのブサイク怪獣で上位のジャイアント・クロー以来の都会を襲う空飛ぶ怪獣もやはりブサイクでした・・・しかもこっちはマシンガンですぐ死ぬしパワーダウン・・・とりあえず日本語タイトルに空の『大』 怪獣ってついてるんだからもうちょっと暴れろよ20分ぐらいはド田舎でもいいから・・・っと思ってしまいます。
ぜんぜん関係ありませんが日本の空の大怪獣 ラドン の泣き声が初めてSF 第七惑星の謎を見たときいきなりラドンの泣き声が出て来てビックリした特撮映画好きは何人いるのでしょうか・・・僕もその一人でその直後にモデル・アニメーションは!ジム・ダンフォースの可愛いつぶらな瞳な怪獣の人形が出て来て笑いそうになった人も何人いることやら・・・
|
2011/07/22 12:35 |
投稿者 : 野辺夏夫
SF映画なのに…エスエフなのに!…親子の軋轢とか痴話喧嘩にしか興味なさそうな人が撮ってる映画って、けっこういろいろ、嘆息の記憶とともに、思い当たるものがありますね。
|
2011/07/22 16:34 |
投稿者 : パラディオン
スダールさん
1957年の『人類危機一髪!巨大怪鳥の爪』ですね。
実は、空の怪獣つながりで、次に書こうと思っていたのですよぉ・・・
ストップモーション大好きなんですけど、手間がかかりすぎるために登場シーンが少ないのが欠点ですね。
ジャイアント・クローの方がよっぽど登場シーン多いですよね。
ラドンの泣き声の件、言われてみれば、そっくりですね。私は気がつきませんでしたけど・・・
私は第七惑星の怪物では笑いませんでしたが(ちょっと苦笑したかも)、ジャイアント・クローでは思いっきり笑いました。
野辺さん
わざわざSF作品でそんなの見せられてもなぁ、って思う作品たくさんあります。
私がSFに期待するのは、何かとんでもなく現実離れしたものを見せてほしい、という事なので・・・
楽しい作品はもちろんですが、悪夢の中にいるような感覚を味わえる作品も大好きです。
|
2011/07/22 22:39 |
投稿者 : アマンダ
[home]
パラディオンさん、初めまして。
主演のマイケル・モリアーティのファンで、この作品も最近買って観たのでレビューを探してて辿りつきました。上のアドレスで少しだけ自分でも書いてますが、怪獣映画についてほとんど知らないのでパラディオンさんの感想が参考になります。
「この映画の主役はクイン」おっしゃる通り、たしかに怪獣を期待してるとストレスたまりますね。「たくさん出すと飽きられるから、ちらりとしか出てこないのがいいんだ」みたいな監督の意図があったようですが。
あと特筆すべきは空撮と思いました。ヘリコプターを使ってクライスラー・ビルへ向かって舞い降りていくところとか、自分がQに乗っているみたいでわくわくします。
最後のロバート・ジョンソン、ちょっと驚きました。
この俳優は変わった人で、滅茶苦茶な生き方がロバジョンに通じるところがあると私自身思っていたので。
では、いきなり超遅コメントにて長々と失礼しました。さいきんの記事も興味深く拝見してます。ありがとうございました!
|
2012/08/29 07:11 |
投稿者 : パラディオン
アマンダさんコメントありがとうございます。
超遅コメント大歓迎です(^−^)
数年前の記事にコメントしてくださる方も結構いらっしゃいますから。
ロバート・ジョンソンにコメント下さるとは、逆にこっちが驚きましたよ(笑)
実は持っているレコード・CDの七割くらいがブルースなもので・・・
ホームページはこれからゆっくり拝見させていただきます。
|
2012/08/29 21:20 |
投稿者 : アマンダ
[home]
パラディオンさん
こちらこそ歓迎ありがとうございます。
おお、7割がブルース!
コレクションを拝見したい気がします・・・
あっそうだ、さっき書き忘れましたが、このQの造形って
『アバター』のイクランに影響を与えてたり・・・しませんよね(笑)
|
2012/08/29 22:24 |
投稿者 : パラディオン
『アバター』って劇場で見たきりだったので、画像検索してみたところ・・・
うーむ、映画人ならQの事は知っていると思いますが、微妙ですね。優雅さが雲泥の差ですけど、確かにフォルムは似てますね。
そういえば、ブルースは基本的には一曲しかない、というような事を誰か言ってませんでしたっけ? ストーンズのキースだったかな?
もちろん全部違う曲に聞こえますけどね、たとえエルモア・ジェイムスでも!
似たようなリフは山ほどあれど・・・
|
2012/08/29 22:47 |
投稿者 : アマンダ
[home]
パラディオンさん
そのセリフは知らなかったですが、キースなら言いそうですね(笑)
|
2012/08/30 06:51 |
|
トラックバック一覧
|
|
しかし、ラリ-・コーエンといえば「刑事コロンボ」の傑作エピソードのひとつ「別れのワイン」(原案を担当したみたいです)を思い出します。SFよりもサスペンスものが合ってるのかもしれませんね?
画像を見るとデビット・キャラダインも出演しているようですが? まさにB級ですな(笑)