| 宇宙水爆戦 | 
 | 2011-11-7 01:00 | 
 |  『宇宙水爆戦』(1955)
 
 先日、たあさんのコメントによりDVDが発売されている事を知り、無性に見たくなったので久しぶりに鑑賞。といっても半年ぶり位ですけど。
 
 で、古い記事は削除して改めて書いてしまおうかと。
 
 大好きな作品だったので評価が気になって検索してみると、好意的なレビューを書いている方が多くて安心しました。このDVD発売を心待ちにしていた方も多いようで、なんだか嬉しくなってしまいました。
 
 惑星間戦争に巻き込まれ、拉致されメタルーナ星に連れて行かれた科学者が、善良なメタルーナ星人の助けを借りて地球へ帰還するまでを描いた作品です。
 
 やっぱり面白いですね、この作品。
 
 子供の頃からこの作品は別格で、どういう理由かワクワク度が他の作品と段違いだったのを覚えています。
 
 何故、それほどまでにこの作品に魅了されたのか、というのは自分の中でちょっと不思議だったのですが・・・
 
 非常にテンポがいい、というもの画面に引き込まれた理由の一つだと思うのですが、いつも感じていたのは、これは男向けの作品だなぁ、という事。
 
 まぁ、SFの多くは男子が好むものですが、この作品は特にそういった印象。
 
 
  前半のインタロシタを組み立てるシーンなんて、何が出来上がるんだろうってそれだけでワクワクしたものです。
 組み立てが終了して三角形のモニターが現れた時は感動しましたね、自分で作ったわけじゃないのに・・・。
 
 この感覚はほとんどの女の子には解らないんじゃあないかな? なんて思うのですが、どうなんでしょうか?
 
 映画の前半は地味ながらもミステリアスな展開で、視聴者を上手く惹き付けているといった印象。
 
 そして、惑星間戦争というスケールの大きさもSF少年の冒険心を刺激していたのは間違いないでしょう。
 
 映画の後半、敵の攻撃をかいくぐってメタルーナ星に円盤が着陸するシーンなんて、言葉では言い表せないほど感動たものです。なかなかのスケール感で、このシーンは今見ても血が騒ぎます!
 
 後に本で知ったのですが、30メートル以上もあるセットでガソリンで爆破シーンを演出していたのだとか。
 
 宇宙空間にタイトル文字といったシンプルなオープニングやジョセフ・ガーシェンソンの音楽、さらには研究室の雰囲気なども含め、全てが私のツボに入ってしまいました。
 
 荒廃したメタルーナが何故これほど美しく見えるのか・・・
 
 
  この映画が有名なのは、映画の最後に登場するメタルーナ・ミュータントのおかげかもしれません。映画は見たことはないけど、このモンスターは知っている、という人も多いのではないでしょうか?
 
 SF関連の書籍でも多く取り上げられ、もはやこの映画のシンボルと言っても良いでしょう。
 
 
  そのメタルーナ・ミュータントですが、最初の脚本、ジョセフ・ニューマン監督の設定には登場していなかったそうです。
 
 脚本に物足りなさを感じたプロデューサーのウィリアム・アランドの意向で、急遽メタルーナ・ミュータントが登場する事になったとの事。
 
 で、そのモンスターを出すことを条件に映画会社側が製作に合意したのだとか。
 
 このあたりの経緯は書籍によって書いてある事が違うのですが・・・
 
 この時代のSF映画にモンスター登場は必須であり、不自然にならない程度に最初の脚本にモンスターの登場シーンを付け足した、というのは事実のようです。
 そのために、映画の終盤に瀕死の重傷の状態でちょっと登場するだけになってしまったというわけです。
 
 もっと活躍してほしかったと見る向きもあるでしょうが、個人的には、これでよかったのでは? と考えております。
 映画全編を通して大暴れしてしまったら、逆にこれほどのインパクトは残せなかったかもしれません。
 重症を負っていなかったらどうだったんだろう? といった幻想と、活躍しなかった分もっと見たかったという願望が残ったのが結果的に良かったのではないか、と。
 
 ぬいぐるみ丸出しのスタイルで走り回ったら幻滅していた可能性も・・・
 
 名デザインのメタルーナ・ミュータントですが、その容姿は典型的なBEM。
 
 ちなみにBEMとは、パルプマガジンによく描かれていた「大目玉の怪物」(Big Eyed Monster)の事で、初期のSF作品に登場する宇宙人の総称となっております。
 
 このモンスターをデザインしたのは『イット・ケイム・フロム・アウター・スペース』(1953)の一つ目宇宙人や『大アマゾンの半魚人』のギルマンも手がけているミリセント・パトリック。
 
 一体につき二万ドルで計三体作られたそうです。
 
 さて
 
 この映画を語る時にどうしても触れておきたいのが、1972年のカリフォルニア海岸で起こった「アメリカ軍によるUFO撃墜事件」
 
 この事件には決定的な証拠があり、旅行者が偶然、炎を上げながら海に落下する物体を八ミリカメラで撮影していたというのです。このフィルムを分析した航空写真の専門家は「トリックではなく、みずから発光した未知の物体が爆発したフィルムである」と結論づけた、というもの。
 
 『宇宙水爆戦』のラストシーンで、メタルーナの円盤が燃えながら海に墜落する場面を覚えている人も多いでしょう。
 
 旅行者が八ミリで撮影したとされるフィルムが、実はこの映画のワンシーンだったというのがこの事件のオチだったという・・・
 
 そのシーンがこれ
 
 
  映像を分析した航空写真の専門家って・・・
 
 本当に信じていたのですかね?
 
 あまりにもお粗末な話ですが、こういったUFO関連の目撃談にはよくある話で、あまり知られていないSF映画のセットや映画のワンシーンにエイリアンの死体を合成したものが証拠写真として出回る事も珍しくありません。
 
 まぁ、よく考えてみれば本物の専門家が映画のフィルムに騙されるわけもないし、事件そのものがUFO信者のでっち上げだった、と考えるのが正解かもしれません。
 
 というわけで
 
 私の中では非常に評価が高いこの作品。
 
 古いだけあって突っ込みどころも多いですが、それはそれで楽しむとして・・・
 
 
  三角形のインタロシタ、空飛ぶ円盤、惑星メタルーナ、そしてメタルーナ・ミュータント。名作という言葉は似合わない気もしますが、私たちをイマジネーションの世界に誘ってくれる良質の古典SF映画だと思います。
 
 もし、メタルーナ・ミュータントが登場していなかったら、この作品はSF映画史に名を残す事が出来たのか?
 
 まぁ、残ったとは思いますが、このモンスターがこの映画の名声(そんなものあるのかわかりませんけど)を決定付けたのは確かでしょう。
 
 で、やっぱりメタルーナ・ミュータントのフィギュア持っているのです。
 
 以前に秋葉原で見たものは、あまりにもリアルすぎて買うのを止めてしまったという思い出があります。
 
 下の画像は、引っ越して部屋が広くなったので、四年ほど前に衝動買いしたわりと新しいもの。それほど精巧ではないですけどまあまあお気に入ってます。ハリーハウゼンとブリキのロボットが多数を占める中、脳みそむき出しのモンスターは浮きまくって置き場所に困っております・・・
 
 
  
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     | 投稿者 : 野辺夏夫 先年BSで放映されましたね。思いのほか綺麗な画質で、古い記憶を刷新させてくれました。次の展開への期待を裏切らない映画でしたが、とくに、隠されていた宇宙船がついに姿を現して以降、矢継ぎ早に繰り出されるワンダフルな画面の数々には・・・「SF雑誌の表紙絵の素敵な世界を、そのまま銀幕に再現して見せてやる!」という強い意志を感じました。
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     | 2011/11/07 16:10 |  
     | 投稿者 : たあ 民放放送時のものですが日本語吹替え音声も収録してあるのは評価したいですね。
 メタルーナ星のシーンは今観ても不気味でドキドキします。某アニメの○ミラス星の設定はここからインスパイアされたのでは?と思ってしまう程。
 
 一家に一台、インタロシタ(笑)
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     | 2011/11/07 21:41 |  
     | 投稿者 : パラディオン 先年のBS放送は私も見ました。あまりに綺麗なので驚かされました。実は今回の画像はその時のものをキャプチャーしたものです(笑)野辺さんのおっしゃるSF雑誌の表紙絵って昔のSFパルプマガジンなどの事ですよね? 結び付けて考えてなかったですけど、言われてみれば上のポスターのデザインなどそのまんまですね。エイリアンのデザインも典型的なものだし。ただ、この作品のデザインの方がさらに先を行っている、というか、私はむしろ後のスタートレックやスターウォーズに近い印象を受けました。微妙に前後の区別がある円盤のデザインに感銘を受けたのを覚えています。
 この作品、確かに力作ですよね。子供心に他の作品よりもワクワク感がはるかに上だったのは、やはり製作側の心意気が伝わっていたのだと思います。
 たあさん
 某アニメの○ミラス星!
 アニメはちゃんと見た事がなかったので画像検索してみてビックリです。
 良く似ている・・・なんてもんじゃない。そのまんまでは? なんだか解らんけど感動してしまいました。原作者は不思議な惑星を良く描くので、もしかしたら偶然かも? なんて思ったりもしますけど。
 一家に一台インタロシタ
 やっぱり(笑)
 見るたびにそう思ってました。
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     | 2011/11/08 03:08 |  
     | 投稿者 : 野辺夏夫 『スターウォーズ』も、「あのスペースオペラの素敵な世界を銀幕に・・!」という作品だったのでしょうが、デザインワークはむしろ先進的なものでした。もしかしたら、この作品も同じような意図で製作されたのではないでしょうか。そしてその目論見は、成功していたと思います。 |  
     | 2011/11/09 22:42 |  
     | 投稿者 : パラディオン 私の中でスペースオペラって能天気なイメージがあったので、シリアスなこの作品をスペースオペラだと感じた事ってありませんでした。でも、スターウォーズに近い印象をもっていたという事は・・・
 そもそも、惑星間戦争がテーマなんてスペースオペラそのものですしね。
 そういえば、「SF雑誌に連載されたものを監督が気に入って映画化」というのは本に書いてありました。
 時代を考えると原作もスペースオペラに近いものだったのかもしれません。
 モンスターは別として、かなり原作に忠実に映画化されたようです。
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     | 2011/11/10 19:48 |  
     | 投稿者 : 野辺夏夫 ごめんなさい・・・これは私の言葉足らずでした。50年代といえば小説ではもう本格SFの時代ですし、パルプマガジンもすでに過去のもの、でも当時のSF絵はまだまだ――古色蒼然というほどではないにせよ――とくに宇宙船のデザインなどは味のあるものだったので、それを念頭において、この映画の「絵」はつくられたのではないか、と思ったのです。(再三のコメント失礼いたしました・・・)
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     | 2011/11/14 11:41 |  
     | 投稿者 : パラディオン あーなるほど、そうでしたか。パルプマガジンといえば、空飛ぶ円盤以前で、宇宙船といえば流線型。50年代にはもっと洗練されたデザインのものが多くなりましたよね。
 私の方こそ解釈が短絡的すぎたと反省しております。
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     | 2011/11/14 19:51 |  | 
 
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次の展開への期待を裏切らない映画でしたが、とくに、隠されていた宇宙船がついに姿を現して以降、矢継ぎ早に繰り出されるワンダフルな画面の数々には・・・「SF雑誌の表紙絵の素敵な世界を、そのまま銀幕に再現して見せてやる!」という強い意志を感じました。