| 縮みゆく人間 | 
 | 2012-5-24 21:26 | 
 |  『縮みゆく人間』(1957)
 
 前回の「短編映画ならではの結末」といった話からこの作品を連想してしまいました、これは長編映画ですけど。
 
 この映画はタイトルどおり、放射能を浴びた主人公スコットが次第に縮んでいく、という物語。放射能の影響を描いた作品が数多く作られた1950年代。
 巨大モンスター全盛の時代という事を考えると、当時としてはかなり異質な作品だったのではないでしょうか?
 
 この作品、昔から評判良いですね。書籍やビデオなどでの評論家のコメントも好意的なものばかり。
 今見ても色あせない特撮、感動的、優れた作品、傑作との評価多数。
 実際かなりシビアな作品ですね、これは。
 
 で、私がどう感じたか、というと
 
 これは
 
 最初に謝っておかなければならないのかもしれませんが
 
 ほとんどがコントに見えてしまったという・・・
 
 巨大なセットの中で人間が動き回るという、非常にシンプルな特撮。
 まぁ、これならば色あせるという事がほとんど無いというのも納得です。
 
 ガリバー旅行記をはじめ、巨人や小人を題材にした物語や映画はこの作品以前にもこれ以降にも数多く存在します。
 ただ、この作品が他と決定的に違うのは
 
 「だんだん小さくなっていく」
 
 というところでしょう。
 
 つまり小人になる前のちょっと小さいだけの段階までもが描かれているという・・・
 
 これが私の場合、笑いのツボに入ってしまったのですが、
 
 誰もいない椅子に向かって話しかけている(そのように見えるアングル)あたりから、もう次の場面が想像できてしまいます。この場面に「ジャジャジャアァァーン」と恐ろしげな音楽がかぶせられ、The Incredible Shrinking Man が初めてその姿を現わします。
 
 
  
  ヾ(≧▽≦)ノギャハハハハ
 
 あの、ちょっと言い訳をさせてもらうと、ですね
 
 この映画よりも先に「奥様は魔女」を見ていたのがいけなかったのだと思います。エンドラの魔法でダーリンが次第に小さくなっていくという、この映画にそっくりな話があったものですから(苦笑)
 
 気がついたら服がブカブカだったり、体が小さくて車の運転もままならなかったり、動物に襲われたり、などなど、あらゆるシーンでスコットとダーリンがオーバーラップしてしまうという・・・
 
 本当に真面目な映画なのに、悲しそうなスコットを見ていると思わず笑みがこぼれてしまいます。
 
 
  ちょっとだけ自己嫌悪・・・
 
 えーと、「奥様は魔女」は忘れる事にして
 
 それでもやはり、これって名作なのかなぁ? という印象はぬぐいきれません。
 
 最初は呑気にも体が縮んでいる事を夫婦共々なかなか確信が持てないのですが、医者に検査してもらったら6〜7センチも小さくなっていたのです。
 
 あの・・・、普通それだけ縮んだら明らかに目線が違うでしょう?
 
 その後、人形の家に住むほど小さくなったスコットにとっては全てが脅威となり、映画の後半は猫や蜘蛛に襲われる様子が描かれサスペンスを盛り上げます。
 
 それにしても
 
 いつまでも猫などを飼っていたら危険だという事くらい気付かなかったのでしょうか?
 
 巨大猫に襲われるというサスペンスよりも、奥さんの浅はかさに腹が立って仕方がありませんでした。
 
 その後奥さんはスコットが猫に食べられてしまったと勘違いしてしまい、ますます主人公は窮地に陥ってしまいます。
 
 少しは探せよ(怒)
 
 ヒロインなのにちっとも美人じゃないし・・・
 
 
  その後、さらに縮み続けるスコットはマッチ箱に住み、水浸しの床で溺れかけたり食料を求めて木の箱をよじ登ったりと大冒険が続きます。
 
 腹が減ったスコットはネズミ捕りに仕掛けられたチーズを発見! 飢えを凌ぐには最高の御馳走だ!!
 
 思案の末、落ちていた釘を罠に投げ込むと上手い具合に罠が作動したものの、その弾みでチーズが排水溝にコロンポトン、でまたまた大爆笑。
 
 一度ツボに入ってしまうと、全てがコントに見えてしまうという悪循環・・・
 
 
  スコットが死んだと思いこんでいる奥さんは、引っ越しを決意し家を去ってしまいます。
 
 絶望の中、体がさらに縮み続けるまま、主人公のナレーションとともにこの映画はエンディングを迎えます。
 
 名作との評価も、もしかしたらこのエンディング故なのかもしれません。
 
 強烈に印象に残る、また静かな余韻を残す、そしてちょっと考えさせられる(哲学的と言っても良いかも)終わり方。
 
 さらに体は縮み続け、ついには見えなくなって、THE END
 
 なのですが
 
 この後スコットどうなるのか?
 
 科学的考証はさておき、
 
 これは・・・縮み続けるけど無にはならないって解釈で良いのでしょうか?
 
 主人公の運命やいかに
 
 一種の無限後退のようなオチとも解釈できるのですが、私の場合、視聴者の想像にゆだねられるエンディングって、あまり好きにはなれないんですよね。
 
 以前書いたリドル・ストーリーなどもそう
 
 オチが思いつかなくて、シュールな方向に逃げたような気がするし、何となくスッキリしないと言うか・・・
 
 まぁ、感じ方は人それぞれだし、オチをはっきり提示しないからこそ名作になった作品もありますからね。
 
 で、この作品を皆さんがどう評価されているのか気になって前もって検索してみたのですが・・・
 
 やはり名作との評価が大勢を占めており、私のような感想を持った人は皆無だったようです。
 
 何だかロクでもない事ばかり書いてしまってスイマセン。私にとってはちょっと不幸な作品となってしまいました・・・。原作を読んでいないのも不覚であります。
 
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     | 投稿者 : modstoon > ほとんどがコントに見えてしまったという・・・
 実際、初期のとんねるずが得意としたネタに“こんな小さい奴が──── ”というシリーズが在りました
 この映画の主人公が遭遇するようなことをパントマイムで演じるわけです
 
 テレビで観る限り、このネタは好評だったようなのである種際どいネタなのでしょうね
 
 縮小人間といえばこの作品と『1/8計画(ウルトラQ)』を思い出されます
 こちらは小さくなったヒロインと相対的に巨人となった主人公の別離を描き
 情感に訴えたストーリー展開が、状況の不条理さを際立たせ巧かったと思います
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     | 2012/05/25 12:34 |  
     | 投稿者 : modstoon “際どいネタ”というよりも、“笑いとサスペンスの境界に在る”と表現すべきでした |  
     | 2012/05/25 12:36 |  
     | 投稿者 : パラディオン とんねるずのネタって見た事ないのですが、そういえば縮小人間を描いた作品でコメディタッチの映画もありましたよね?ネタが作りやすいのは確かかもしれませんが、この作品で笑い転げた人はあまりいないのでしょうね・・・『1/8計画』も『巨人の惑星』もサスペンスフルでした。
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     | 2012/05/25 21:20 |  
     | 投稿者 : たあ 教訓:生命の危険はまさに身近に存在する。たとえ家庭の中であっても…(苦笑) 奥さんが一番危険だったんじゃないか? |  
     | 2012/05/26 23:11 |  
     | 投稿者 : パラディオン おや? たあさんには何か心当たりのようなものが・・・?冗談はさておき
 私が映画で得た教訓といえば
 ・・・いや、それはいつかレビューの文章で。
 この作品のような余韻も映画の楽しみの一つであります。
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     | 2012/05/27 10:14 |  
     | 投稿者 : 野辺夏夫 (お久しぶりです)私は、原作を読んだせいで、この映画を見るのに長いこと二の足を踏んでしまっていました。縮みはじめるきっかけは殺虫剤だか何だかの複合汚染のようなもので(科学的考証なんて、もともとそっちのけです)朝目覚めるたびに1インチ、また1インチと小さくなっている恐ろしさが当人の一人称で語られる、暗澹たる小説だったのですが。縮んでゆく男のありさまをストレートに映像で見せてしまうとこれはちょっと、恐怖の世界というよりワンダーランドかも。
 『巨人の惑星』だと、世界そのものが歪んでしまった悪夢のような雰囲気をうまく出していましたが、この作品はたしかに、どちらかというと魔法的ですね。
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     | 2012/05/27 17:11 |  
     | 投稿者 : パラディオン おお! 小説では一日1インチですか。なんだかとても面白そうですね。映画の場合はだいたい3〜4段階程度でしたから、原作の面白さをそのまま表現できなかったのでしょうか? 評判は良いみたいですが。レビューで書いたとおり私にとっては悪夢的な感覚は皆無でありました・・・ |  
     | 2012/05/27 18:03 |  
     | 投稿者 : たあ あ!野辺様のコメントで思い出しました。
 原作はリチャード・マシスンでしたね。
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     | 2012/05/27 21:39 |  
     | 投稿者 : パラディオン リチャード・マシスン短編が好きで脚本などのイメージも強かったですが、長編も結構書いているのですね。未読の『縮みゆく人間』も読みたくなりました。これはぜひとも買わねば。
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     | 2012/05/27 21:50 |  
     | 投稿者 : タノQ
	   
	    [home] わたしはこれ原作よんで映像のほうだけ視てませんが、けっこう印象つよい小説だったです。映画が好評なのは原作の出来が加味されてる場合も、ありうるんじゃないでしょうか。ラストは、ちょっと気がとおくなるようなアレでした。
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     | 2012/05/28 06:54 |  
     | 投稿者 : パラディオン オチを映画で知っていたので本は読まなかったのですが・・・やはり読みたくなって注文してしまいました。ほしい物リストの数冊とともに。
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     | 2012/05/28 09:12 |  
     | 投稿者 : 野辺夏夫 あとから気になったので調べてみたら、先のコメントの中に私の記憶違いがありました、ごめんなさい。実はもっ(いえ、これからお読みになるのでしたね)
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     | 2012/05/29 10:09 |  
     | 投稿者 : パラディオン おっと、気を使って頂いて・・・中古品しかなくて、思ったより高い値段が付いているのですね。読むの楽しみです。
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     | 2012/05/29 20:47 |  | 
 
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実際、初期のとんねるずが得意としたネタに“こんな小さい奴が──── ”というシリーズが在りました
この映画の主人公が遭遇するようなことをパントマイムで演じるわけです
テレビで観る限り、このネタは好評だったようなのである種際どいネタなのでしょうね
縮小人間といえばこの作品と『1/8計画(ウルトラQ)』を思い出されます
こちらは小さくなったヒロインと相対的に巨人となった主人公の別離を描き
情感に訴えたストーリー展開が、状況の不条理さを際立たせ巧かったと思います