回転 |
2012-11-5 00:00 |
ジャック・クレイトン監督の『回転』(1961)
ホラーはあまり好きではない私ですが、もちろんある程度は見ています。
映画を見る回数があまりにも多いので、ホラーっぽいのもたまに目にすると言った程度かもしれませんけど・・・
これまでに見たホラー映画といえば
『ナイト・オブ・ザ・リビング・デッド』や同監督の『フロム・ザ・ダークサイド』などの短編。
『エクソシスト』
有名な『13日の金曜日』などは、第一作目と『 ジェイソンX』(2001) のみ観賞
ブログにも書いた『妖女ゴーゴン』とか、最近では『サイレント・ヒル』など。
あとは、
もう思いつきません・・・
まぁ、なんだかんだ言っても、ホラーテイストのSFやファンタジーなども含めれば結構見てますね。
血だらけのグロいやつは全く駄目で
『ソウ』などはパート1があまりにも面白かったので、パート2以降も全部見たのですが、進むにつれ画面を正視できなくなってしまいました・・・
たびたび目をそらしながらもシリーズ最後までなんとか観賞。
話が続いてしまうのだから、見たく無くてもしょうがない(ー_ー#)
私のホラー映画の知識は恥ずかしながらこの程度
というわけで
この『回転』もたまたま観賞したのですが、非常に印象に残った作品でもありました。
何故、わざわざこの作品を書こうと思ったのか、と言いますと・・・
私の頭の中にあるホラー映画のイメージとほぼ一致するのがこの作品だから。
これ、あくまでも個人的な基準(^^;)
私の中では、ホラー映画というのはこういった作品を指す、という事ですかね。
人によって恐怖の対象って全く違うでしょうし、ホラー映画というものを明確に定義することも当然出来ないと思うのですが、個人的には非常に高く評価している作品であります。
特撮を駆使したり、大きな音を出してびっくりさせたりする映画とは違い、まー、単純に怖かったですね、これ。
でも
そういうのが好きな人にとっては少々退屈かもしれませんね。「セックスしたカップルは真っ先に殺される」といった類のホラーが好きな人からみたらどうなんでしょう?
ストーリーは遅々として進まないし・・・
そのストーリーですが
主人公の女性ギデンス(デボラ・カー)が家庭教師として優しい家政婦さんと可愛い子供たちがいる裕福な家庭にやってくる所から物語は始まります。
ホラーとしては定番の「屋敷物」
簡単に言ってしまえば、昔この屋敷で不幸な死を遂げた幽霊達が子供たちを操り悪影響を与えていると考えた主人公が、悪霊を追い払うために孤軍奮闘する、というお話。
こうして文章で書いてしまうと何の変哲もない作品のようですが(実際そうなのかも知れませんが)これは面白かったです。
で、この映画の何処が良いかと言うと
先に書いたように、爆音や造形で怖がらせる映画ではなく・・・
あの・・・、上手く言えません(苦笑)
何というか、人間が本能的に怖がる部分をピンポイントで刺激されるとでも言ったらよいのか・・・
最初は「何かがおかしい」といった、ほんの些細な違和感
一見無邪気そうな子供達の奇妙な言動。子供たちの無邪気な行動も見方を変えると・・・
やがて少しずつ不可解な出来事が起こり始め、「この屋敷には何かいる」という主人公の疑惑がやがて確信に変わるまでの描写は見ごたえがありました。
いかにも怪しげといった人物を登場させる事無く、それでも次第に視聴者の恐怖感を煽る演出も見事だったし、デボラ・カーの演技も凄かったですね。途中で「もしかしたら主人公が狂人だった、というオチか?」と思っちゃいましたよ。
「かくれんぼ」という遊びを利用して主人公に屋敷を探索させるシーンなどは秀逸。
怖がりの私など、音楽、視聴者への暗示方法と幽霊を映すカメラアングルだけで震えあがってました・・・
この映画も「音」が印象的な作品で、子供が口ずさむ歌 オルゴール 鳥のさえずりなどが効果的に使われていました。
結末はちょっと気になったのですが・・・
まずは、家政婦さんが霊に憑かれた少年と主人公を二人きりで屋敷に残す事にあっさりと同意した事。
まぁ、この映画の結末のためにはそういう舞台が必要だったという事で・・・
「子供に幽霊の名前を言わせる」という方法で霊から解放するのですが、
何故主人公は自分の力で幽霊を退治できると確信していたのか、また何故あんな方法で霊は去ったのか、そして何故霊が去ったあと子供は死んでしまったのか?
いささか不可解な点もあり、多くが謎のままで終わってしまいます。
この結末と後味の悪さが府に落ちない人も多いのではないでしょうか?
まぁ、ちょっと気になったものの、そんな事は大した問題では無い、とも思っています。
意図的に謎めいた結末が用意された作品やリドルストーリーなどはあまり好まないのですが、だからといって全ての映画やその結末にに明確な答えを求めるなんてあまり意味の無い事ではないか、とも個人的には思っているので。これは深読みが苦手な私の言い訳か・・・?
個人的な嗜好の話に終始してしまいましたが、客観的にみてもこの映画は間違いなく良作ではある思います。
|
(トラックバックURL) http://palladion.fantasia.to/step_blog/archive_246.htm
|
コメント |
|
コメント一覧 |
投稿者 : 野辺夏夫
私にはまだ見る機会のない映画ですが、よるべない不安、とでもいったような感覚が伝わってきます。彼女の置かれた状況がそうだというだけでなく・・・
筋立てのすぐわきのところに、必ずしも意図されていない暗い穴のような領域がぽっかり口をひらいている気配を感じながら、たどらされる物語というのは、自分の足もとまでが危うくなるかのようで、心地よく気味が悪いものですね。
周到にはりめぐらされた伏線から、思わせぶりの謎を残す終わり方に至るまで、完全に計算されて組み立てられているのがはっきりわかる作品なんて、それはそれで名人芸ではあるのでしょうが、しばらくたってからまた味わいたくなるものだとは、私には思えないのです。
|
2012/11/05 16:56 |
投稿者 : パラディオン
この作品は名人芸ですよ、また違った意味で。おっしゃるとおり心地よく気味が悪い作品です。年代を考えてもおそらくいくつかの映画のフォーマットにもなっているのかもしれませんが、恐ろしくシンプルなので、ホラー映画は全く別の方向へと進化していったような気がします。
|
2012/11/05 20:21 |
投稿者 : 野辺夏夫
これは見てみたい!と思ったのですが、DVDは現在入手困難のようですね・・・Amazonだと、中古でも凄い値段・・・!
|
2012/11/05 23:27 |
投稿者 : たあ
スプラッター映画のように派手な人体破壊描写の多い作品は自分はあまり好みませんが、観ているうちにじわじわと不安な気持ちが湧いてくる幻想怪奇ものは大好きです(夜中にトイレに行けなくなるリスクは負いますが…)。
流行のホラーもののラストは大抵、事件解決で大団円または最後に「ワアッ!」と観客を飛びあがらせてエンド… しかし、これが意外と物足りないんですよね。
やはり怖い映画は最後まで不安と疑問を残したまま静かにフェイドアウト…
このゾクゾク感が堪りません。
|
2012/11/05 23:28 |
投稿者 : たあ
そういえば以前、子供がキャスティングされているSF映画はつまらん(ぎゃあぎゃあ喚くばかりでウルサイ)云々と書いたことがありましたが、ホラー映画にとっては子供の存在がかなり重要な作品って多いと思いません?
|
2012/11/05 23:39 |
投稿者 : パラディオン
野辺さん
本当ですね、今時こんな値段のDVDがあるとは・・・
まぁ、昔のビデオの値段を考えれば、とは言っても50円や100円で鑑賞できる時代ですからね。値段に見合う映画だと言い切る自信はありません。いい映画なのでそのうち安く販売されるような気もしますが。
たあさん
そうそう、余韻なんですよ、私が好きなのも。この作品を見た後、しばらくの間、なんでもない風景がめちゃくちゃ怖かったです。怖がっているのに好きというのも変ですが・・・
この映画でも最後の方は子供のヒステリックな悲鳴がすごかったです。幾分うるさく感じましたが、効果音の一部のように認識していました。
ホラーをそれほど沢山見ているわけでもないですが。言われてみれば、確かにホラー映画と子供って関係が深いですね。
|
2012/11/06 08:48 |
投稿者 : 野辺夏夫
あとになって思い出したのですが、デボラ・カーといえば『王様と私』。巨大なフープスカートをはいたままバンコクの目抜き通りを強気で突っ切る姿は人間型ホバークラフトみたいでしたが、あれも美人家庭教師のアドベンチャー。毎度とんでもない所へ赴任するものです・・・『ソロモン王の洞窟』や『ゼンダ城の虜』といった有名な冒険小説の映画化でもヒロインに抜擢されたのですね。さすがは大女優・・・残念ながらSF作品への出演はなかったようですが。でも、豪華怪作『007カジノ・ロワイヤル』には出てました。
|
2012/11/06 17:11 |
投稿者 : パラディオン
デボラ・カー主演だから見た、という人も多いかもしれませんね。私は彼女の作品は4〜5作しか見ていませんが(007カジノ・ロワイヤルすら未見)まぎれもなく大女優。よく考えてみたらデボラ・カーが主演のホラーというだけでも凄い事なのかもしれませんが、そういった視点は全くありませんでした・・・
もっともこの作品が「どうしてあの大女優がこんな作品に出ているの?」といった位置付けなのか、大女優が出演して然るべき作品なのか私には分かりませんが。
|
2012/11/06 18:38 |
投稿者 : たあ
私も未見の作品で気になったのでいろいろ調べていたら、原作となったヘンリー・ジェイムズ著の「ねじの回転」は心理小説の傑作としてオペラや演劇としても上演されているみたいですね。2009年にはTVシリーズ化されているみたいです。
このことを知るとデボラ・カーがキャスティングされたのも頷けます。
|
2012/11/06 21:51 |
投稿者 : パラディオン
今回は単なる感想文で相変わらず下調べが足りませんね、私。
恥ずかしながらヘンリー・ジェイムズって、名前を聞いた事がある程度でほとんど知りませんでした(汗)
私もちょっと調べてみたのですが、なんとリメイクもされているじゃありませんか。原作も面白そうですね。読んでみたくなりました。
|
2012/11/06 22:16 |
投稿者 : タノQ
[home]
子どものころ、なん度かТVでみた作品です。なにやら曖昧でモワ〜としてて、ほんと妖しい気配が気色わるく、しかも品のある作風なんですよね。ちょっとトラウマになりそうな。
わたしもDVDを買おうとアマゾン調べたさい、あんまり高額だったので腹たちましたっけ。
Hジェイムズの原作これ一読の価値あるですよー。
|
2012/11/08 06:15 |
投稿者 : パラディオン
この作品、地上波以外でも放送されていたように思います。地味に何度も放送されていますね。品があるように感じるのは主演女優の影響もあるとは思いますが、明らかにそれだけではありませんよね。皆さんのコメントの影響で未読の本を買っりしていますが、これも決まりです。
|
2012/11/08 12:25 |
|
トラックバック一覧
|
|
筋立てのすぐわきのところに、必ずしも意図されていない暗い穴のような領域がぽっかり口をひらいている気配を感じながら、たどらされる物語というのは、自分の足もとまでが危うくなるかのようで、心地よく気味が悪いものですね。
周到にはりめぐらされた伏線から、思わせぶりの謎を残す終わり方に至るまで、完全に計算されて組み立てられているのがはっきりわかる作品なんて、それはそれで名人芸ではあるのでしょうが、しばらくたってからまた味わいたくなるものだとは、私には思えないのです。