地球の危機 |
2011-12-13 22:05 |
地球の危機(1961)
北極をテスト航海中の原子力潜水艦シービュー号がヴァン・アレン帯の炎上に遭遇。シービュー号の設計者であるネルソン提督は核爆発の衝撃による鎮火を提案するが、自然消滅説を支持する国連の科学者たちと意見が対立。自説を信じるネルソン提督は地球の危機を救うべく、シービュー号を出航させるが・・・
といったストーリーの作品なのですが
アーウィン・アレンはこの映画の成功をきっかけに、テレビシリーズ『原子力潜水艦シービュー号』 (1964〜1968)を企画し大成功を収めます。
もともとアレンは『海底二万マイル』を撮りたかったらしいのですが、ディズニー版が存在したためにオリジナルを考案して生まれたのがこの作品だそうです。
後にヒット作を連発し、名プロデューサーとなるアレンの原点とも言える記念すべき作品ですね。
後のアレン作品に見られる、良い意味での荒唐無稽さはそれほどでもなく、フライング・サブなども登場しませんが、L・B・アボットのちょっとレトロな特撮は見どころ十分だと思います。
さて
私にとってこの映画は特別思い入れのあるものではないのですが、何かと思うところが多い作品なのであります。
まずは、とてもSF映画とは思えない能天気、ではなくて、嵐の前の穏やかさを思わせる甘い歌声で始まるオープニング
で、その歌が終わると同時に海面に急浮上するシービュー号
いやぁ、格好いいですねー! シービュー号のプロポーションが良いこともあり、とても美しいシーンに仕上がっています。
おそらく誰もが突っ込みを入れたくなるでしょうけど、この角度・・・
そして舞台は艦内へと変わり、ネルソン提督と部下が視察に来たお偉いさんにシービュー号の設備を見せて回るシーンへと続きます。
狭くて暗いという、閉所恐怖症に陥りそうな潜水艦のイメージとは全く違う空間がそこには描かれていました。
多彩なセットと、窓から見える海底の風景・・・良かったです。全部セットで作ったのか、一部は本物の施設でロケをしたのか分かりませんが、あたかもそこにシービュー号が実在しているかのような錯覚さえ覚えるほど素晴らしかったです。
登場人物と一緒に観光でもしているような気分で映画を見ていると、空を覆う炎に遭遇。シービュー号のクルーは国連へと向かいます。
ここから物語は急展開を見せ、シービュー号のクルーたちはヴァン・アレン帯にミサイルを撃ち込むべく、発射地点へ向かって航海を開始。以降はネルソン提督と、ミサイルの発射を阻止しようとする人たちとの攻防がメインとなります。
ネルソン提督の意見が頭ごなしに否定され、誰にも聞き入れてもらえないのはちょっと歯がゆい展開なのですが・・・、まぁ解決方法があまりにも突拍子もないものなので仕方が無いですね。
目的地に到着するまでに待ち受ける数々の試練とは
・機雷
・巨大生物(イカ)の襲撃
・巨大生物(タコ)の襲撃
・難破船の発見とそれに伴うクルーの士気の低下
・提督を精神病患者扱いする精神科医
・提督と対立し、指揮権を剥奪しようと試みる艦長
・作戦を阻止しようとミサイル攻撃をしかける国連艦隊
・部屋を燃やされ命を狙われる提督
・「神の意思に逆らうな」と爆弾で脅迫する男
舞台が艦内に限られているので、これらは視聴者を飽きさせないための工夫なのでしょうけど、よくまぁこれだけ次から次へと・・・
後半の大部分は疑心暗鬼で泥沼化する人間関係が描かれているのですが、せめて船長くらいは提督の理解者であって欲しかったです。
裏切り者は誰か? といったサスペンスはちょっとだけ楽しめましたけど。
そして、この映画の最後のあっけなさは特筆物。
ミサイル発射に成功すると、あっという間にヴァン・アレン帯は消滅。「やったぞ」「おめでとう」「さぁ、急いで帰ろう」でTHE END
あの
その後の地上がちょっと気になるんですけど・・・
難破船で帰国した脱艦者たちって、どう考えても生きて帰れるとは思えないんですけど?
まぁ、いいです(´・ω・`)
そういえば
古い映画を見ていると、どこでも平気でタバコを吸ってますね・・・
『刑事コロンボ』などでも、コロンボだけではなく鑑識までもが平気でくわえタバコで指紋採取してたりとか。
この作品でも提督は場面が変わるたびにタバコに火を付けていたような印象すらあります・・・
最後に
私個人にとって最大の見どころとなったのが、出演している俳優さんたちでした。
豪華、と言っても良いのでしょかね・・・
ネルソン提督はSFファンには『禁断の惑星』のモービアス博士でおなじみのウォルター・ピジョン
ネルソン提督の唯一の理解者はピーター・ローレ
世界屈指の科学者にはどうしても見えないんですけど・・・
ネルソン提督の秘書は『かわいい魔女ジニー』のバーバラ・イーデン
映画の冒頭でトランペットを吹いていたのはフランキー・アヴァロンですね。
「ヴィーナス」や「ホワイ」などのヒット曲を知っている人も多いでしょう。オープニングの甘い歌声はこの人だったのですね。トランペットも名手である本人の演奏によるもの。
精神科医の役はジョーン・フォンテイン
私は『レベッカ』 (1940)でジョーン・フォンテインを知ったのですが、これまでに私が見た全ての女優さんで最も綺麗だと思ったのがこの人。ヒッチコック作品のヒロインは皆綺麗でしたが、私の中ではこの人が一番。
年はとりましたが、相変わらずお美しい・・・
というわけで、
ラストシーンでの彼女の扱いだけは絶対に許せんのです( ̄  ̄メ)
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コメント |
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コメント一覧 |
投稿者 : 野辺夏夫
シービュー号の航行シーンと、艦名の由来でもある展望窓ごしに見る海中の光景を中心に、コラージュして十数分にまとめれば、とても美しく幻想的な映像作品になると思います(YouTubeにありそうですね)・・・我ながら含みのある言い方ですが・・・なにしろ創元推理文庫にあったこの映画のノヴェライズ版、正直言って、特撮映像も俳優さんの顔も抜きであのストーリーにつきあうのはつらかった・・・私はとうとう読了できませんでした(でもDVDは本棚にあります)。
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2011/12/14 16:48 |
投稿者 : パラディオン
そういえば、シービュー号の航行シーンはかなりの回数挿入されていましたね。
先日の『黒い蠍』の顔のアップとは違って全く気にならなかったのは、そのシーンが好きだからですね。われながら勝手なものです。もっとも距離や時間の経過を示すなどの明確な意図があって挿入されたものだとは思いますけど。
ノヴェライズ版といえば
実は私の中の一部に「活字で読んでも面白い作品が本当に良い映画だ」という自分勝手な基準が未だ存在しているのですが、そう考えるとこの映画は・・・
やはり映画は見るものだ、というのを実感。この作品、活字ではちょっと読む気にならないかも、です。
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2011/12/14 20:43 |
投稿者 : たあ
ピーター・ローレはディズニー版『海底二万哩』にコンセイユ役で出演してましたね。この時はアロナクス教授の助手でしたが執事役にしか見えなかった(苦笑)…
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2011/12/16 23:48 |
投稿者 : パラディオン
『海底二万哩』のピーター・ローレ。私もしばらくは漠然と執事と思っていたような・・・
私のイメージは『カサブランカ』あたりですかね。脇役にしてはどの映画でも凄い存在感で、大好きな役者さんでした。
『地球の危機』はキャリア末期の作品だったのですね。
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2011/12/17 21:21 |
投稿者 : てふてふはべる(渡邊)
またまた好きな作品で嬉しいです。
私の世代はTV版も白黒(フライングサブなし)版から視聴しておりました。カラー版との違いは、色々ありましたが、黒沢良氏除き、クレイン館長は田口計氏(カラー版は納谷氏)、副長も二瓶秀雄氏でなく、愛川欣也氏があてておりましたので、印象に残っております。
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2012/01/21 21:45 |
投稿者 : パラディオン
てふてふはべるさま
コメント読ませていただくと、メチャメチャ詳しいですね。白黒版から見ていたとは羨ましいです・・・
私は子供の頃に見た記憶がないのですが、この作品って再放送ってありましたかね?
本とかプラモは持っていたのですが・・・
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2012/01/22 19:41 |
投稿者 : てふてふはべる
パラディオン様(このページから入ったもので、管理人様の御芳名を先程知った次第であります)
白黒版は、日本では再放送ありませんでした。「海底科学作戦」も再放送はとばしていたのが多く、「サイボーグ」とか、スパイアクション物はとばされておりましたね。数年前、6作品がパイオニアからLDとして発売されました。字幕版でしたが・・・。
そういえば、映画版のTV放映時、配役違ってましたが、クレイン艦長はどちらも田口計さんだったですね。
32〜33話、白黒版ありますが、丁寧な作りでした。因みに別スレですが、
TVで「前世紀探検」放映されてから、劇場で「モスラ」観て、こちらも断片的に記憶残っておりました。
今、ブログから離れましたが、「金城哲夫研究会」「てふてふはべる」の管理をしておりまして、一時、そういった事も書いているかも知れません。
長々とすみませんでした。
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2012/01/25 12:38 |
投稿者 : パラディオン
てふてふはべる様。情報をありがとうございます。ブログから離れたとの事ですが、ブログそのものはまだ継続しているのですね。さらには別のブログが・・・
金城哲夫さんといえば、私の世代の特撮ファンならば知らない人はいないでしょう? これからじーっくりと、サイト拝読させていただきます。
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2012/01/25 21:14 |
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