『緯度0大作戦』(1969)
久しぶりの日本映画。この作品に関しては裏話のような事も知らないので、内容と詳細はウィキペディアのリンクを貼っておきます。
緯度0大作戦-ウィキペディア
日本映画を取り上げた時の恒例になってしまった手抜きですが・・・
これによると「近年まで映像の二次利用に関する契約書の所在が不明であったため、ビデオ・LD化されなかった」との事。
この映画、小学生の時に見たきりで長年もう一度見たいと思っていた作品なのですが、数年前ようやくDVDが発売されたのにはそういう理由があったのですね。
年齢的に再上映だと思っていたのですが、調べてみて「東宝チャンピオン祭り」だと判明しました。
と同時に思ったよりも評判が良くない、というよりもかなり評判の悪い作品である事も判明・・・
子供の頃に一度見ただけなのに、ストーリーや結末まで鮮明に覚えていたのも「他愛のないストーリーでツッコミどころが満載。ほとんど漫画のような映画」であるというのが理由だったのかも(苦笑)
海で遭難して救助される。連れて行かれた場所は科学が進歩していてユートピアを思わせる。金やダイヤモンドが豊富にある。などの設定は多くの海洋アドベンチャー作品と共通の設定だし、どこかで見たようなシーンの連続も、こっちを最初に見ていたから新鮮に映っただけだったのかも知れません。
名作とは言えない出来栄えなのは承知してますが、やっぱり私は海底都市とユートピアの物語には弱いものですから。
私の中ではなかなかスタイリッシュな映画という印象であり、この作品の欠点は「最後の方で登場するあまりにもヌイグルミ然としたモンスター達だけ」とずーっと思っていたのですが・・・
これだけでも批判されて当然のような・・・
俳優さんたちは豪華キャスト
日本からは宝田明、岡田真澄、田昭彦など。
ウルトラマンよりも後の作品なのに、黒部進が悪役の下っ端で出演しているのにはちょっと驚いてしまいました。
これほど豪華なメンバーでは仕方ないですかね。単純に映画の方がテレビよりも上位概念だったという事なのかもしれませんけど。
名優ジョセフ・コットンを最初に見たのがこの作品。この映画の印象御が強すぎて、その後色々な作品でジョセフ・コットンを見ても全て「アルファ号のマッケンジー艦長」に見えてしまうのにはちょっと困りました。私の好きなミステリー作品にも結構出ているし・・・
あと、マッケンジー艦長がずーっと不機嫌そうだったのがちょっと気になりました。
こんな作品に出たくなかったのかなぁ? なんて思いたくないんですが・・・。そういう役作りだったと思いたいです。
悪のマッドサイエンティスト、マリクを演じていたのがシーザー・ロメロ
この映画ではよく笑ってましたね。ほとんどのセリフに笑い声が付くという・・・
いわゆる「高笑い」というやつなのですが
「ワハハハハハハ、マッケンジーがやってきたぞ。連中に何か起こるかゆっくり見物するんだな。ワハハハハハハァ」
「ワハハハハァ。見たか博士、ちゃんと自分の名前が解るんだ。わはははははは。今度はこの巨大化血清だ。こいつを打てばたちまち三倍の大きさになる。わずか数分の間にだ。わはははははは、はははははははははっは」
「ワハハハハハハ」の部分、いらないんじゃないですかね・・・
ところで
現実に存在する悪党って本当にこういった「高笑い」をするものなのでしょうか? SFやアクション映画では特に顕著な気がします。
この事をよく知人に聞いたりするのですが、皆「分からない」と言います。当たり前ですけどね・・・
多分演出の一部で実際はそんな事ないと思ってますが。
関係ないけど『レオン』での悪役の描き方は良かったなぁ、と。
そんなマリクの愛人役を演じているのがジョセフ・コットンの本当の妻であるパトリシア・メディナ。
奥さん特別出演ですね。そういえば『刑事コロンボ』でもフォークの奥さんが犯人の愛人役で出ていた事がありました。目の前でイチャイチャされるのって平気なんでしょうか?
記者役のリチャード・ジャッケルもSF映画でも良く見かける顔。古いところでは『アウターリミッツ』などにも出演。
東宝っぽいメカデザインは流石に良いですね。アルファ号も黒鮫号もなかなか美しい。
海底なのにどこか宇宙空間を思わせるのは東宝特撮の特徴の一つですね。音楽が一緒という事もありますが。
そして海底都市「緯度ゼロ」
広大なスケール感は素晴らしかったです。セットだけでなく実際のロケーションを合成したのが良かったのでしょうか。多くの作品で描かれるユートピアはスケール感に乏しく、ホテルのセット程度にしか見えないのが欠点だったのですが、「緯度ゼロ」は見事でした。
最新テクノロジーや新兵器が沢山登場するのはこの映画の良い所だと思いますが、特撮の出来に関してはは「さすが東宝」と思わせてくれるところもあれば「他に方法無かったのかなぁ?」と感じる部分も多々あり、観賞中何度も複雑な気持ちにさせられました。
クライマックスの攻防戦はどちらも隙だらけ(特に悪党マリク)で双方ともマヌケな印象だったのが残念。
元愛人の脳を怪物に移植するマリク。
改造手術に夢中になりすぎてマッケンジー達の侵入を簡単に許してしまいます。
「呪ってやるうぅ、死ね、死ね、死ねえぇぇぇ」って、そんな事考えてる人間の脳を移植して大丈夫かなぁって思っていたら、案の定自分が襲われて、というベタな展開。
マッケンジー陣営は、空を飛べる装置があるのにいきなり硫酸の沼に足を突っ込んで大けがしたり・・・
改造されて空を飛ぶアルファ号は格好よかったのですが、遠くに逃げずにいつまでも同じところをぐるぐると旋回。黒鮫号のマリクはアルファ号をレーザーで撃ち落とそうと必死で部下の警告も無視して自ら仕掛けた罠にはまって自爆・・・
この辺りのシーンは、どうしてもドリフのコントに見えてしまいます。人数も五人だし・・・
エンディングはちょっとひねってあり
ウィキペディアによると「監督意図では緯度ゼロはパラレルワールド」だそうです。マッケンジーやマリクはともかく、元々一緒に行動していた田代博士のそっくりさんがいるのは意味不明なんですけど???
まぁ、色々書きましたが今でもこの作品大好きなのです。
海底物やロストワールド物は沢山見てきましたが、「ここに住みたい」って思わせてくれた唯一の作品ですから。